日本最強のエリート小学校・慶應幼稚舎の知られざる実像…学費1千万円、入試は紙のテストなし

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慶應義塾幼稚舎(「Wikipedia」より/Harani0403)

「日本一の小学校」と呼ばれる慶應義塾幼稚舎。アイドルグループ・嵐の櫻井翔、元テニス選手の松岡修造、政治家の岸信夫など数多くの著名人を輩出しており、知名度は高いが、その実態はあまり知られていない。

 そこで、長年にわたって慶應幼稚舎に合格者を送り続けているアンテナ・プレスクール校長の石井至氏に、慶應幼稚舎の魅力や受験の実態について聞いた。

幼稚舎出身者が本当のエリート?

「格」でいえば日本最高峰の小学校といわれる慶應幼稚舎。創立は1874年(明治7年)で、145年の歴史を誇る名門だ。同校に入学すれば受験をせずにエスカレーター式に慶應義塾大学まで進学できるため、6歳にして「慶應卒」のエリート人生が約束される。

「慶應ブランド」のメリットは、慶應卒業者の同窓会組織である「三田会」の人脈も手に入ることにある。福澤諭吉の教えである「社中協力」で結びついた慶應出身者たちのネットワークは強固で、勤務先別、地域別、職種別などでさまざまな三田会が形成されており、お互いに利益を分配しているのだ。

『慶應幼稚舎』(幻冬舎)の著者である石井氏は、有名私立小学校への受験指導を行う幼児教室、アンテナ・プレスクールの校長を務める人物だ。石井氏は、子どもを慶應幼稚舎に入れる魅力をこう語る。

「何よりも、幼稚舎に受かれば日本トップクラスの私立大学である慶大にエスカレーターで進学できるところが利点です。さらに、社会人になってからも慶應出身者のネットワークで守られることも大きな魅力でしょう。そのため、子どもを幼稚舎に入れたいと希望する保護者には慶應出身者が多いです。子どもを幼稚舎に送り込めれば、家族そろって強力な慶應ネットワークの恩恵を受けられますからね」(石井氏)

 日本最強の学閥といわれる三田会においても、幼稚舎出身者は別格の扱いになるという。

「同じ慶大生でも、幼稚舎から上がってきた人はエリート扱いされます。慶大内には、同じ慶應の付属高校でも埼玉の慶應志木高出身者は入れないサークルもあるんです。なので、大学から慶應に入った人は完全に外様で“お客様”扱い。慶應のブランドとネットワークを活用したければ、幼稚舎か遅くとも付属中学から入らなければなりません。福澤諭吉は『天は人の上に人を造らず……』とおっしゃったようですが、慶應ほどエリート意識・差別意識のある学校も珍しいですね」(同)

学費合計1000万円、倍率は10倍以上

 慶應幼稚舎の受験は例年、厳しい競争になる。初年度に必要な学費は160万円、寄付金や塾債(学校債)を含めれば6年間で1000万円近くかかる。それでも、男子96名、女子48名の募集人数に対して、2019年度は男子970名、女子706名が志願した。倍率は男子10.1倍、女子14.7倍と、男女ともに10倍を超える。

 私立小学校のお受験といえば、大人でも解けない難解なペーパーテストや保護者同伴の面接が定番だが、慶應幼稚舎はそのどちらもない。慶應幼稚舎の試験は、先生の動きに合わせて模倣するなどの「体操テスト」、集団ゲーム中の動きを審査される「行動観察テスト」、そして、絵を描くなどの「絵画・製作テスト」で合否が決まる。かなり特殊だが、慶應側はこれだけで優秀な子どもを見分けられるとしている。

「非ペーパーの試験でも、子どもの優劣ははっきりわかりますし、しっかりと対策をすれば合格できます。ただ、多くの保護者は『ペーパーテストでないと子どもの優劣は判断できない』と思っているのも事実です。幼稚舎側は、そのような保護者との認識ギャップを利用しつつ、保護者にお受験対策で過度な負担をかけないようにし、仮に不合格でも恨まれないような仕組みにしているのではないでしょうか。面接に関しては、本音としてはやりたいところでしょうが、膨大な受験者数を考えると、現実的には難しいというのが実情のようです」(同)