イオンもセブン&アイもGMS事業1つで他事業の巨額利益を“帳消し”にする構造抜け出せず

 セブン&アイHDもイオンと同様にGMSの不振をほかの業態で穴埋めしている。主に、国内でコンビニエンスストアを展開するセブン-イレブン・ジャパンがカバーしているのだ。そのため、全体の業績は減収となったものの、利益が大きく増えているので、全社業績は好調といっていいだろう。

 それではここで、GMSを展開するイトーヨーカ堂の業績を確認する。19年3~11月期の営業収益は前年同期比3.9%減の8766億円、営業損益は8億9600万円の赤字(前年同期は2億円の赤字)だった。減収となり、営業赤字は拡大した。

 イトーヨーカ堂は、長らく苦戦が続いている。19年2月期は営業収益が前期比0.6%減の1兆2361億円、最終損益は78億円の赤字(前の期は58億円の赤字)だった。減収は3年連続、最終赤字は5年連続となる。一方で営業利益は53.0%増の47億円と増益で黒字だった。ただ、営業利益率はわずか0.4%にすぎない。

 もちろん、イトーヨーカ堂も手をこまねいているわけではない。不採算店の閉鎖を進めたほか、有力テナントを誘致してショッピングセンター(SC)化を進めたり、ニーズのある食品部門を強化したりしてGMS改革を推し進めている。

 たとえば、東京都北区のイトーヨーカドー赤羽店をGMS改革に沿ったかたちで19年3月に改装オープンしている。1階に菓子専門店「シャトレーゼ」など食品の物販店を配置したほか、食品売り場がある地下1階にはイートインを設置した。食品売り場と食品の物販、イートインを集積させて即食需要の取り込みを図っている。また、5階にはテナントとしてカジュアル衣料品店「GU(ジーユー)」と家電量販店「nojima(ノジマ)」を配置した。こうした改革を行った結果、赤羽店の19年3~11月のSC合計における坪当たり売上高は、改装前と比べて10.1%増えたという。こうした成功事例も出てきており、今後は期待ができる。ただ、全体の収益への影響は今のところ限定的だ。今後はより一層の改革推進が必要となるだろう。

 このように、イトーヨーカ堂の改革は道半ばで、厳しい状況が続いているが、一方でセブン-イレブンの業績は好調を維持しており、穴埋めができている。19年3~11月期のチェーン全店の売上高は前年同期比2.2%増の3兆7897億円、売上高にあたる営業総収入は1.2%増の6717億円、営業利益は7.0%増の1984億円だった。

 セブン-イレブンは今、24時間営業をめぐる問題に直面している。ただ、既存店業績を大きく揺るがすほどには至っていない。19年3~11月期の既存店売上高は前年同期比0.1%減と微減にとどまった。天候不良や消費増税といった向かい風が吹いたなか、微減で済んだのは御の字といえるだろう。

 セブン&アイHDとイオンはGMS以外で大きな利益を生み出せる事業を抱えており、GMSの不振をカバーできている。それは両社の強みとなっている一方、甘えとなってGMS改革に遅れが生じている面もあるだろう。ほかの事業でカバーできるとしても、限界がある。両社のGMS改革は待ったなしといえるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。