旅館“コロナ倒産”続出…東京五輪当て込んだホテルが開業ラッシュ、一時閉鎖も取り沙汰

「田村屋旅館 HP」より

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け国内で最初に「緊急事態宣言」が出た北海道のホテルグループ7社の若手経営者が3月27日、北海道庁で記者会見し、宿泊施設の安全対策をPRした。こまめな消毒や料理の衛生管理強化をアピールし、利用を呼びかけた。

 訪日客が姿を消したのに続いて、相次ぐ外出自粛要請で国内客も激減。観光地のホテル・旅館ではキャンセルが続出した。愛知県蒲郡市の西浦温泉の観光旅館・冨士見荘は、旅館の“コロナ倒産”第1号となった。2月21日、自己破産を申請した。中国からの団体ツアー客のキャンセルが発生、先行きの見通しが立たなくなった。負債額は7億円。

 福島県猪苗代町の沼尻温泉にある田村屋旅館は3月6日、民事再生法の適用を申請した。業歴100年を超える老舗だが、暖冬によるスキー客の減少と新型コロナウイルスの影響で力尽きた。負債は4億2000万円である。長野県木曽町の御嶽山のふもとにあるホテル木曽温泉を運営する「おやど」は3月19日、事業を停止し自己破産を申請するという。負債は3000万円。

上場ホテル企業が軒並み業績を下方修正

 大手ホテルでは下方修正の発表ラッシュだ。

 東京商工リサーチが3月18日時点でまとめたリポート「『新型コロナ』ショック、活況の国内ホテル業界を直撃」によると、業績を下方修正した上場企業は6社。売上高291億円、利益133億円。

 プリンスホテルを展開する西武ホールディングス(東証1部)、箱根小涌園や椿山荘の藤田観光(同)、リゾートホテル・エクシブを運営するリゾートトラスト(同)、京都ホテル(東証2部)、ロイヤルホテル(同)、ワシントンホテル(同)の6社が業績を下方修正した。会員制リゾートホテル最大手のリゾートトラストは20年3月期の売上高を従来予想の1714億円から1600億円へ114億円引き下げた。

 昨年の台風15号、16号に加えて、コロナウイルスの感染拡大に伴い、訪日客が減った。さらに国内利用者が当初予想を下回った。業績悪化を受け、23円を計画していた期末配当を前期末より6円少ない17円に引き下げた。年間で46円が40円となる。

 京都ホテルは、国内外からの宿泊客の減少や宴会のキャンセルなどで、20年3月期の単独最終損益は1億9200万円の赤字(前期は1億7400万円の黒字)に転落する。従来予想を3億300万円下回り、4期ぶりの赤字となる。ロイヤルホテルの20年3月期の連結営業利益は3億円の赤字(前期は20億円の黒字)。6億円の黒字予想から8期ぶりに営業赤字となる。2月中旬にも業績予想を引き下げたが、中国などからの外国人観光客の減少が想定より大きかった。主力のリーガロイヤルホテル(大阪市)の3月前半の売上高は前年同期比50%減という。

 ワシントンホテルは20年3月期の連結業績予想を撤回し、「未定」とした。業績の見直しは2月に続いて2度目。3月1~15日の売上高は前年同期比68%減となり、月間で17%減としていた計画を大幅に下回った。「売上高が前期比3%減の208億円、純利益が31%減の11億円」という業績予想になった。

帝国ホテルは訪日客が大幅減 

 シティホテルの「御三家」の筆頭、帝国ホテルは3月19日、20年3月期の連結純利益の見通しを前期比37%減の23億円に引き下げた。37億円と微増の予想から一転して減益となる。売上高は7%減の544億円(従来予想は1%増590億円)に下方修正した。新型コロナウイルスの感染が広がったため外国人を中心に宿泊客が大きく減り、法人主催の宴会もキャンセルが相次いだ。帝国ホテルは東京都千代田区と大阪市北区にそれぞれ大型ホテルがあり、宿泊客の半数を外国人が占める。