イオン、ドラッグストアと不動産で稼ぐ収益構造に…スーパーが足かせ、新型コロナが追い打ち

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イオン店舗(「Wikipedia」より)

 イオンは4月10日、2020年2月期の連結決算を発表した。売上高にあたる営業収益は前期比1.0%増の8兆6042億円、営業利益が1.5%増の2155億円、純利益は13.5%増の268億円だった。一見すると増収増益なので、問題がないように思える。だが、てこ入れ中で主力の総合スーパー(GMS)が減益で、売上高営業利益率は0.2%まで低下しており、てこ入れは不十分なままだ。

 子会社でドラッグストア大手のウエルシアホールディングスを含むヘルス&ウエルネス事業が収益をけん引した。同事業の営業収益は11.2%増の8832億円、営業利益が33.3%増の350億円と増収増益だった。調剤併設店舗が増えたことで調剤売り上げが年間を通じて好調に推移したほか、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対策商品や紙製品、食品の売り上げが1月後半以降に急増したことが寄与した。

 不動産事業も増収増益を達成した。営業収益は3.2%増の3719億円、営業利益は13.8%増の632億円だった。主要企業のイオンモールは、国内で11モールの改装と4モールの増床を実施して集客に成功したほか、中国や東南アジアの専門店売り上げが伸びた。総合金融事業は営業減益だったものの、不動産事業やヘルス&ウエルネス事業よりも多く稼ぎ出している。総合金融事業の営業収益は11.0%増の4847億円、営業利益は0.5%減の704億円だった。

 ヘルス&ウエルネス事業と不動産事業、総合金融事業の3事業の19年2月期の営業収益は計1兆7398億円で、連結営業収益に占める割合は20%にすぎない。だが、営業利益は計1687億円で、連結営業利益に占める割合は78%にもなる。イオンは利益面では、これら3事業がないと成り立たない収益構造になっている。

グループの足を引っ張るGMS事業

 反対に、GMS事業が足を引っ張っている。同事業の19年2月期の営業収益は3兆705億円で連結営業収益に占める割合が36%と大きく、食品スーパー事業に次ぐ規模を誇る。だが、営業利益はわずか72億円で、連結営業利益に占める割合は3%にすぎない。ヘルス&ウエルネス事業や不動産事業、総合金融事業、食品スーパー事業と比べて圧倒的に見劣りする。そしてGMS事業の営業利益率は、わずか0.2%だ。

 GMS事業は、主力のイオンリテールが足を引っ張った。同社の19年2月期の営業利益は、前期から61億円減って56億円と、大幅減益になった。懸念されていた昨年10月の消費増税に関しては、同月の既存店売上高が7.7%減になるなど消費の落ち込みが見られたものの、駆け込み需要で9月は11.9%増と伸びた。また、米国発祥の大型セール「ブラックフライデー」が功を奏し、11月がプラスで着地するなど消費増税の影響をある程度抑えられている。また、新型コロナウイルスの感染拡大で感染予防対策としてマスクや除菌剤など衛生用品の需要が高まったほか、トイレットペーパーなど紙製品をはじめとした家庭用品の買い急ぎがあり、今年2月の既存店売上高は2.6%増と伸長した。ただ、梅雨や暖冬、新型コロナの影響で衣料品の通期の既存店売上高が前期比2.8%減と落ち込んだことが響き、全社の通期の既存店売上高は0.1%減のマイナス成長となった。

 これに対し、イオンは“GMS改革”を掲げて対策を講じてきている。ブラックフライデーを開催したり、買った商品をすぐに食べたいという「即食需要」を取り込むため、できたての飲食料品をその場で味わえる「ここdeデリ」の展開に力を入れたりしている。だが、抜本的な改革には至っていないのが現状だ。もっとも、改革は一朝一夕にいくものではない。成果が出るまでには、もう少しの時間が必要なのかもしれない。