菅首相、次期首相に河野太郎氏を想定か…コロナ対応、首相官邸内で意思疎通とれず

 自分が政権をとってからも、田村憲久厚労相の影は薄く、「意思決定はさせず、面倒な実務だけ押し付けられて倒れる寸前」(厚労省担当の全国紙記者)まで追い込まれている。田村氏は「厚労族のエース」とされてきたが、今回のタイミングでの厚労相登用について「総裁選で楯突いた石破派なので、面倒くさい役目をあえて押し付けた」(先の自民ベテラン議員)との声まで出る始末だ。

官房副長官にもかみつく

 河野氏は報道だけでなく、身内の坂井学官房副長官にまでかみつき始めた。坂井氏は21日の記者会見で「6月までに対象となるすべての国民に必要な数量の確保を見込んでいる」と発言したが、河野氏は22日の記者会見で「政府内で情報の齟齬(そご)があった」と否定。古い情報が紛れ込んでいたとして、一般国民向けの接種時期は未定と説明した。突然の河野氏の発言に驚いたのか、坂井氏は直後の会見で河野氏の発言に対し、「河野氏の発言の趣旨、真意を確認中だ」と戸惑いを隠さなかった。このあまりの混乱ぶりに、二階幹事長が26日の記者会見で「論評するに至らないことだ。発言を片方が取り消すとか面倒くさい。よく調整してもらいたい」と苦言を呈する異常事態となっている。

 ここからうかがえるのは、コロナ対応についての意思決定が混乱しているということだ。本来危機管理を担うべき、「加藤-坂井ライン」が蚊帳の外に置かれ、「―河野ライン」が優先され始めている。先の河野氏のNHK報道へのデタラメ発言も併せて考えると、菅氏がコロナ対応で必死になるあまり、「行革で目立ってきた河野に対応を一任して短期的な成果を上げたい」という本音が人事にまで反映され始めたということだろう。河野氏としても、これまでのスケジュールをすべて自分がひっくり返すことで、強い存在感を内外に示す狙いがあったとみられる。

河野氏、コロナ対応で次期首相競争でリード

 スピード感を重視する菅氏らしい今回のポスト新設だが、旅行業界からの強い支持がある二階派からは「Go Toトラベルを早く復活させろ」と言われ、海外メディアから開催困難と次々に報じられる東京五輪についても利害関係者から「コロナを早めに抑えて開催を強行しろ」と言われ、苦肉の策という面もあるのは確かだ。

 菅氏からすれば、東京五輪の開催スケジュールからいっても、2月7日までの緊急事態宣言中に抑え込むのはベストだが、2週間程度延長しても3月中ごろに抑え込めれば問題ないと考えているのだろう。しかし、Go To再開は確実に国内全体での感染拡大を招くことは必至で、菅氏は難しい政権運営を当面強いられそうだ。

 一方、今回、行革とワクチンという菅政権の目玉ポストを兼務する河野氏は次期首相候補の筆頭に躍り出たといっていい。加藤氏に次期首相を禅譲するとの見方も菅政権発足当時はあったが、今回のワクチン担当相新設でその目は消えた。

 コロナ禍で強い逆風が吹く菅政権がいつまで続くかは未知数だが、菅氏が今秋の自民党総裁選で再選を狙うとすれば、ここで河野氏が実績を上げるかどうかが一つのカギとなるのは間違いない。

 もし河野氏がコロナ封じ込めに一定以上の成果を上げた場合、菅氏にとっては、河野氏が所属する麻生派の領袖である麻生太郎氏の支持を強く取り付けられるという副産物もある。麻生氏は前回の総裁選で河野氏の出馬を「まだその時じゃない」と引き留めた手前、河野氏を美味しいポストにつけた菅首相を無下にもできないからだ。

 河野氏がコロナ封じ込めに手腕を発揮できるかが、今の永田町の最大の関心事と言えそうだ。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

菅首相、次期首相に河野太郎氏を想定か…コロナ対応、首相官邸内で意思疎通とれずの画像2●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)
Kyuzo Matsuoka
ジャーナリスト
マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや文春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka

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