「塚田農場」を手に入れた「オイシックス」の強かな戦略…鮮魚の宅配にも進出

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「オイシックスのサイト」より

 都内を中心に居酒屋「塚田農場」「四十八(よんぱち)漁場」などを展開するエー・ピーホールディングス(APHD、東証1部上場)は3月26日、TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京・新宿区)で臨時株主総会を開催した。

 資本金を17億1554万円減額し、新たに増資する。APHDの米山久社長が10億円、オイシックス・ラ・大地(東証1部上場)が2億4000万円普通株で出資した。投資事業組合は優先株で13億円の第三者割当増資を引き受け、合計で25億4000万円を調達する。

 減増資後は米山久社長の持ち株比率が39.53%から51.35%に高まる。米山社長の資産管理会社MTRインベストメントは9.37%から6.67%に低下する。オイシックスが5.56%を保有する第3位の株主になる。

 オイシックスは3月31日付でAPHD傘下の水産卸セブンワーク(東京・港区)の株式の51%を取得し、連結子会社にする。取得額は非公開。オイシックスの子会社になるセブンワークは社名を豊洲漁商産直市場に変更する。セブンワークの20年3月期の売上高は12億円、2600万円の最終利益をあげている。

 オイシックスはセブンワークを子会社にすることで豊洲市場で魚の買い付けるほか、全国の漁港から中間流通を通さずに直接買い付けることができるようになる。APHDとオイシックスは昨年10月から食領域での連携について協議してきた。オイシックスはAPHDの第三者割当増資を引き受ける見返りにセブンワークを手に入れた。

 食品宅配最大手のオイシックスは「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の3ブランドで約38万人の会員を持つ。2021年3月期の連結決算の売上高は前期比37%増の975億円、純利益は5倍の40億円の見込み。コロナ禍での巣ごもり消費の追い風に乗り、急成長を遂げた“勝ち組”だ。生鮮野菜の宅配が主力だが、セブンワークを手に入れたことで鮮魚の宅配にも進出する。

 APHDは、居酒屋「塚田農場」や「四十八漁場」の食材をオイシックスのインターネット通販サイトで販売するほか、食材の共同調達や加工工場を共同で使うことによって原価の削減を目指す。

APHDは20年12月末に13億円の債務超過に転落

 市場縮小の続く外食産業のなかでも特に厳しいのが居酒屋業界だ。APHDの前身はエーピーカンパニー。2001年、有限会社として設立(株式会社化は06年)。04年に地鶏居酒屋をオープンしてから急成長し、12年9月、東証マザーズに上場(13年東証1部へ指定替え)。20年10月、持ち株会社体制に移行し、商号をエー・ピーホールディングスに変更した。

 地鶏専門の居酒屋「塚田農場」、鮮魚の「四十八漁場」など221店舗を運営するAPHDは生産から販売までを一貫して自前でやっているのが特徴だ。地鶏はふ化から飼育、加工まですべて自分の手で行う。宮崎県で農場を運営し、みやざき地頭鶏、黒さつま鶏などを飼育している。

 漁業にも参入。宮崎県を中心に漁師から直接仕入れるだけでなく、同県では漁業権を借り、自社の漁船を動かしている。朝水揚げされた水産物を「今朝獲れ便」と名付け、当日中に店舗に配送する。

 居酒屋業界が「冬の時代」といわれて久しいが、それに追い打ちをかけたのが昨年からの新型コロナだ。来客数が激減して、業績を直撃した。20年4~6月期の売上高は12億円で、前年同期に比べて8割減、最終損益は14億円の赤字だった。その後も客足は戻らなかった。

 20年4~12月期の連結決算の売上高は前年同期比60%減の73億円に落ち込み、営業損益は25億円の赤字(前年同期は1.9億円の黒字)、最終損益は28億円の赤字(同1.3億円の黒字)に転落した。その結果、20年3月末に15億円あった純資産(自己資本比率14.5%)が13億円の債務超過に陥った。上場廃止の危機だ。17億円の減資と25億円の増資で債務超過は解消するが、今後も赤字が続くと、再び債務超過となる。