所得の海外流出額、なぜ度肝を抜くレベルに?需給ギャップ、2年以上マイナスの可能性

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 まず、政府の来年度の経済成長率+3.2%という見通しはかなりの確度で下方修正される可能性が高い。というのも、仮に 1-3 月期の成長率が前期比マイナスとなれば、その後に相当の政策効果があっても+3%台の成長は厳しいといえる。なお、先のESPフォーキャスト調査に基づけば、ウクライナ戦争の影響が十分織り込まれていない中でも22年度の成長率が+2.6%程度、23年度が同+1.6%程度と予測されている。

 こうしたなか、岸田政権発足後に打ち出された経済対策は、確かに表面上の財政支出額は55.7兆円と大きいが、過去計上分の合算や枠のみの確保で使い道が定まっていない予算も計上されており、規模を必要以上に大きく見せている傾向がある。実際、補正予算に伴い新たに追加された国債発行額は+22兆円程度にとどまっている。

 このように、岸田政権は来年度予算も含めて財政措置を打ち出しているが、筆者の試算によるGDP押し上げ効果は最大で見積もっても+7兆円程度である。つまり、現時点で公表されている政府の経済対策では需要不足を解消するには力不足といえる。

早急に求められる省エネ対策の加速

 こうした厳しい経済環境の中で、日本経済にとってどのような対策が必要なのだろうか。 そこで、世界基準に即した経済対策に軌道修正すべく、海外の財政措置を参考にしながら、以下では政府に求められる対応策について提案したい。

 こうした状況を受けて、岸田首相はウクライナ情勢に伴う物価高などを踏まえた新たな経済対策について既に検討をはじめており、現時点で報道されている情報に基づけば、これからさらなる深刻化が予想される化石燃料や穀物の価格上昇への対応となりそうだ。そして、具体的なメニューとしては、現在実施されている石油元売り業者への補助金の継続や、家計向けの給付金等が報道されており、4月中にも内容がまとまり、決定される見込みとなっている。

 しかし、旧来型の補助金や給付金のような需要喚起の乏しい政策では、国民全体からの合意を得られにくいだろう。こうした政策では、一時的なエネルギーや食料支出の負担軽減にしかならないため、政府は補助金や給付金より、省エネ耐久財の更なる普及や、省エネ向けの設備投資等を更に促す攻めの政策をとるべきだろう。

 そこで参考になるのが、リーマンショック後に世界で実施されたグリーン・ニューディール政策である。具体的には、給付金で負担を軽減するというより、家計や企業に省エネ関連の支出を促す減税や補助等により、需要喚起とエネルギー消費抑制の両立を目指す政策である。

 特に海外の取り組みと比べると、日本はこの点で出遅れていることからすれば、海外の対策に倣った住宅や公共施設への省エネ設備の導入拡大や、エコカーや省エネ家電への買い替え促進策への支出を拡充すること等を提案したい。

 また、環境・省エネに関する投資が促進されれば、雇用や所得環境にも好影響が及ぶことが期待される。さらに海外からの省エネ関連需要も加われば、日本経済を牽引してきた加工組立産業もさらに競争力を高めることができる可能性がある。つまり、環境・省エネ消費や投資を起点として環境関連産業を活性化させることができれば、需要を創出して経済が成長することにもつながる期待が持てる。

 こうした視点からも、政府には給付金や補助金などによる一時的な痛み止めではなく、環境・省エネ投資に対する減税や補助等によって、投資を促すことなどが求められるといえる。

 また、各国の政策のもう一つの視点は国民生活の「安心」「安全」であり、社会的インフラの充実がそのための基礎であることに異論の余地はないだろう。その社会的インフラが老朽化していることからすれば、将来必ず行わなければならないインフラ更新の前倒しも合意が得られるのではないか。