東京・新築マンション平均8千万円、購入者の意外な実像…頭金「1割未満」は危険

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パワーカップルが高額マンションを買っている

 ライフステージ別に、購入価格の違いをみると、首都圏新築マンション契約者全体では5890万円ですが、シングル男性5275万円、シングル女性4915万円に対して、夫婦のみ世帯では5928万円で、子どもあり世帯では6222万円、シニアカップルでは6324万円となっています。夫婦のみ世帯で共働きしている世帯のうち、世帯総年収が1000万円を超える、いわゆるパワーカップルでは購入価格が6991万円に跳ね上がります。夫婦ともに勤務しているので、より都心に近い、利便性の高いマンションを求める傾向が強いため、どうしても購入価格が高くなるのではないでしょうか。

 それに対して、共働きしている既婚世帯で、年収が1000万円に満たない世帯では平均5056万円と大きな違いがあります。こちらは、共働きといっても、どちらかはパート勤務などで、比較的年収はさほど多くないため、都心やその周辺ではなく、郊外の新築マンションなどを買う傾向が強いのではないでしょうか。

夫婦のみ世帯の自己資金割合は1割程度に

 首都圏のなかでも高額物件が多い東京23区などのマンションは、共働きで世帯年収が1000万円を超える世帯が買っているケースが多いとみられますが、その場合、気になるのが自己資金比率の低さです。やはりリクルートの調査によると、首都圏で新築マンションを買った人の自己資金割合は図表4のようになっています。

 契約者全体では22.1%と、購入価格の2割強の自己資金を用意して購入しています。なかでも、数は少ないのですが、高齢者中心のシニアカップルでは自己資金割合が68.8%と7割近くに達しており、シングル男性でも28.9%、シングル女性は27.9%と、シングルは3割近くの自己資金を用意しています。それに対して、既婚の子ども世帯あり世帯の自己資金割合は16.1%で、夫婦のみ世帯は10.5%にとどまっています。夫婦のみ世帯では、平均でも1割程度の自己資金ですから、なかには、1割未満で、ほとんど自己資金なしで買っている世帯も多いのではないかとみられます。

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ローン延滞から最悪は競売に付されるケースも

??自己資金割合が低いとさまざまなリスクがあります。何より、自己資金が少なく、借入額が多くなると、毎月の返済負担が重くなってしまいすし、不動産価格が下落に転じたときの担保割れリスクが高まります。自己資金を2割以上用意していれば、購入後に価格が若干低下しても、簡単には担保割れにはなりません。したがって、返済などが困難になって売却する必要が生じても比較的容易に売却でき、住宅ローン残高を一括返済しても、手元に売却代金の一部が残り、その後の生活の支えとなります。

 しかし、自己資金が少なく、担保割れになってしまうと、簡単に売却できません。売却するためには、担保割れ分の自己資金を用意しなければなりませんが、毎月の返済が厳しい段階では、それは難しい話でしょう。そうすると、ローンの延滞から、任意売却、最悪、競売になって、安くしか売れず、住まいを失った上で、住宅ローンの一部だけが残るといった事態も想定されます。

購入計画の先送りも勇気ある決断に

 このローン延滞、決してあり得ない話ではありません。金融庁の調査によると、2023年初頭でも、全国の銀行には月間1000件以上の住宅ローンの条件変更の相談が行われています。新型コロナウイルス感染症拡大が始まった当初には、月間数千件に達していましたから、それに比べれば減ってはいるのですが、このところはほとんど横ばいが続き、月によっては前月より増加することもあります。2023年の賃上げは例年以上のレベルにはなりそうですが、それ以上に諸物価の高騰が続いており、家計の負担感がいっそう重くなっています。家計が苦しくなっても、住宅ローンの返済は待ってくれませんから、徹底した家計管理が求められます。

 すでに、マンションを買ってしまった人は、節約にこころがけて住宅ローンの返済が発生しないようにしなければなりませんし、これから購入を考えている人は、決して無理をせずに、2割以上の自己資金を用意し、返済に無理がないように返済負担率をできるだけ低くして、より安全・安心の資金計画で買えるようにしていただきたいものです。場合により、いったんは購入を見送り、自己資金や年収が増えるのを待つというのも勇気ある決断かもしれません。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)