コナミが優勢か…「ウマ娘」差止め訴訟の勝算と本気度、パワプロと酷似との指摘も

著作権では普遍的なアイデアは守れない…裁判の今後はどうなるのか

 著作権的な観点からアイデア、プログラムの模倣でトラブルに発展するケースもあるが、特許に比べると権利侵害と認めさせるのは困難だという。

「過去にはゲーム内の表現に関する著作権をめぐる裁判が起こりましたが、必ずしも原告側が勝てるわけではないんです。たとえば、2009年に釣りゲーム『釣り★スタ』を提供するグリーが、DeNA提供の『釣りゲータウン2』における一部のシステムを著作権侵害として訴えた裁判。この裁判で争点になったのは、魚を引き寄せるときの画面が酷似していたという点。東京地裁では『グリーの画面の本質的特徴』が『DeNAの画面にも維持されている』と言い渡し著作権侵害を認めた一方、知財高裁では、『実際の水中の影像と比較しても、ありふれた表現といわざるを得ない』と著作権侵害を認めませんでした。

 著作権法が保護するのは『創作的な表現』であり、アイデアが共通しても、著作権侵害とはなりません。また、ありふれた表現が類似するだけでは、創作的な部分が共通するわけではないので、やはり侵害とはなりません。『釣り★スタ』は、まさにその点が問題になった判決であり、単に“似ている”というだけでは、著作権侵害が認められるとは限らない一例です。その他にも、例えば、スマホゲーム『放置少女 ~百花繚乱の萌姫たち~』の開発・運営元企業が『戦姫コレクション ~戦国乱舞の乙女たち~』の開発・運営元企業に対し、著作権侵害を訴えたケースがあり、こちらも著作権侵害に該当しないという判決が下されています」(同)

 著作権は特段の手続きを要せず、著作者の死後70年経過するまで保護期間が定められているので、登録が必要で有効期間も20年である特許権に比べると強力な権利だと橋本氏は言う。しかし、あくまで表現の範囲内でしか作品を保護できないため、ゲーム内のアイデア、プログラムとなるとより具体的な拘束力のある特許権のほうが、自社の利益を守るためには有効な面もある。では、今回の裁判は今後どんな展開を迎えるのだろうか。

「訴訟にまで持ち込んだということは、コナミ側は勝ち目のあると判断した特許権に基づいて訴訟を提起していると考えられ、裁判で特許権侵害が認められる可能性は充分あると思います。もっとも、一度訴訟になった後に、裁判上の和解で解決する場合もあります。コナミが訴訟で勝訴した場合、Cygamesはウマ娘のサービスを終了しなければならなくなるため、もし裁判所から和解の話が出た折には、Cygames側は和解で終了する方にメリットがありそうですが、コナミ側が和解に応じるかは、株主の意向や裁判所の心証次第かと思います」(同)

(取材・文=文月/A4studio、協力=橋本阿友子/弁護士)