開設から25年のヨドバシ.com、いまだアマゾンの売上10分の1で勝てない理由

「Amazon Prime Video」や「Amazon Music Prime」といった特典を付けることは、グローバル展開していてスケールメリットが圧倒的に大きいアマゾンならではの戦略。ヨドバシが模倣できるサービスではない。

今は何でもネットで買う時代、フリマアプリもライバル

 ヨドバシ.comがなかなかアマゾンに追い付けない理由は、実は消費者のマインドの変化にもあるという。

「2010年代には、家電量販店で実際の商品を見てECサイトで購入するショールーミングという購買方法がよく行われていました。しかしコロナ禍以降、在宅勤務が広がり、家電量販店へ足を運ぶ人が激減。近年はどこのECサイトも商品の画像をさまざまな角度から何枚も撮影しており、細部までわかるように配慮がされているので、わざわざ店舗に赴いてまで実物を見なくてもよくなりました。そのため、消費者は直接ECサイトから家電製品を購入するようになり、すべて自宅で消費を完結する流れに変化していきました」(同)

 さらに近年になって台頭し始めたフリマアプリなどの存在も、ヨドバシ.com躍進を阻む存在になっている。

「フリマアプリ最大手のメルカリは、もともとCtoCから出発したアプリでしたが、最近は小規模事業者も参入しており、ジャンルを問わず新品から中古品まで多種多様な商品が掲載されるようになりました。しかも、価格自体も市場に流通しているものよりも安い傾向にあるので、消費者マインド的にも嬉しい。気にいらない商品であれば、すぐに売ってしまえばよいですしね。

 またスマホ決済サービス『メルペイ』で支払うことができ、後払いにすることも可能。クレジットカードを持てない学生やお年寄りも参入しやすいシステムにもなっているのです。メルカリはアマゾンよりも気軽に商品を出品できる、かつアマゾンでは拾いきれないユーザー層を獲得しているので、ヨドバシ.comからユーザーが流動している可能性も考えられます。もはやライバルはアマゾンだけではなく、『ヨドバシ 対 アマゾン 対 メルカリ』という構図に変化しているといえるでしょう」(同)

ヨドバシ.comならではのサービスでしっかり固定客を掴む

 もっとも、ヨドバシ.comの方向性は間違っていないという。

「今のヨドバシカメラは、ユーザーのみならず、ECサイトの専門家、コンサルタントからも高評価をもらっており、きちんとファンのつくサービスづくりを徹底しているんです。ヨドバシカメラは、三大方針として『少量・多品種・高回転』を掲げています。店舗を持っているからこそ倉庫以外に店舗からも商品を発送でき、また自社で配送まで行い無駄なコストを削減しているので、高い品質のサービスを提供できているのです。

 さらにいえば、未上場なので株主にとやかく言われることなく、事業を続けられるのも強みのひとつ。一般的にヨドバシカメラ規模の企業で上場していると、株主たちから『アマゾンと同じようにFBAをやれ!』といった意見が飛んでくるでしょうが、ヨドバシカメラは未上場なので株主の意見に振り回されることはありません。

 世界中に浸透しておりスケールが圧倒的なアマゾンには量でこそ太刀打ちできていないものの、質の高さで勝負できているので、今の方向性を貫くのではないでしょうか。消費者も賢く、各社のサービスを比較しながら利用しているので、ヨドバシ.comの強みを押し出していけば生き残ることはできるかと思います」(同)

 たとえ売上でアマゾンに大きく離されていても、客の心をガッツリと掴んでいるヨドバシ.com。アマゾンやメルカリのサービスや使い勝手が少しでも悪いと感じたら、ヨドバシ.comを候補に入れるのもアリだろう。

(取材・文=A4studio、協力=寺尾淳/フリーライター)