「太陽光発電は放置だけで年10億円稼げる美味しいビジネス」に潜む罠とリスク

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「gettyimages」より

 今年2月2日、格闘団体「アウトサイダー」出身の格闘家であり実業家でもある萩原裕介氏が、人気格闘家・朝倉未来のYouTubeチャンネルに出演した。格闘技大会『Breaking Down』参加の話の流れで、萩原氏は自身が経営する企業の事業についても説明しており、年商は30億円にも達していると語っていた。なかでも太陽光発電ビジネスの分野では、年商10億円を達成しているという。いったいなぜ太陽光発電ビジネスだけでここまでの売り上げを獲得できたのか。そこで今回は、太陽光ビジネスに詳しい常葉大学名誉教授の山本隆三氏に、このビジネスの持つメリットやデメリットについて解説してもらった。

日本における太陽光発電の8割は事業用

「太陽光パネルは、電気的な性質が異なるシリコン製のN型半導体とP型半導体を重ね合わせたもので、太陽光が当たると、そのエネルギーが電気エネルギーに変換されます。太陽光で生み出される電気は直流であり、太陽光パネル発電には、我々が日常生活で使いやすい交流に変換するパワーコンディショナーが付属しています。

 今日本で利用されている太陽光発電のうち、設備容量で見ると家庭用とされるのが約2割で、残り約8割は家庭用太陽光発電の仕組みを大規模化した事業用の太陽光発電です。家庭用の太陽光発電設備は、パネル数で10数枚、設備容量が4キロワット(kW)から5kW程度になります。事業用というのは10kW以上、パネルの枚数だと40枚程度以上からになるとされています。現在日本には約70万件の事業用の太陽光パネル設備があるといわれていますが、こうした事業用太陽光パネルを休耕地などの空き地や山の斜面を削った土地などにずらりと並べて電力を生み、それを電力会社に売ることで収入を得ているわけですね。

 ちなみによく家庭用と対比する形で『メガソーラー』の呼称が使われますが、あれは大手などが設置する1メガワット(1000kW)以上の設備のこと。実は70万件ほどある事業用太陽光パネルのうちの約9割が50kW未満なので、メガソーラーはほんの一握りということです。多くの事業者が保有するのは、小中規模の設備で、なかには複数設備を所有する事業者もいます。想像ですが、萩原氏が所有されているのも中規模の事業用太陽光パネル設備で、それを数多く所有しているのかもしれません」(山本氏)

 風力発電や水力発電は数多くの風車やダムを利用するため投資額も大きくなり、個人での運用はほぼ不可能だが、中規模の太陽光発電であれば個人レベルでオーナーになることもできる。

利益を生み出していた売電収入が減少している

 現在、固定価格買取制度(FIT)に基づく売電価格は下がってきているという。

「日本では2009年から余剰電力買取制度が始まり、発電した電力の内、余ったものを電力会社に販売することができるようになりました。福島第一原発事故を経た12年に、当時の民主党政権が脱原発を掲げて太陽光発電などの再生可能エネルギーにより発電された電力を高値で買い取る政策を打ち出します。固定価格買取制度(FIT)と呼ばれる制度です。太陽光発電設備からの電力の買取価格は破格で、1kWh(1kWの電力を1時間発電(使用)した場合の電力量)あたり42円(税込み)。さらに買い取り期間を家庭用で10年間、事業用で20年間固定したことで、太陽光発電設備の設置を進める事業者が一気に増えたのです」(同)

 だが現在は、この売電収入の買取価格が下がってきている。

「FIT制度は買取価格が買取期間の間固定されるシステムです。これは設備を導入した時点での買取価格が固定されるものですが、12年の導入後下落が続いていて、現在は1kWhあたり10円程度まで低下しています。やはり、FIT導入当時の設備事業者を増やすために用意した釣り針の餌が大きすぎたということでしょう。