JR九州社長「乗客数十人で税金200億円、価値あるのか」肥薩線復旧に疑問

 ちなみにJR九州の古宮社長が「これまで8割、乗客が減ってきている」と言及したJR肥薩線は、民営化された1987年当時より乗客が8割減少しており、2019年時点の輸送密度は414人となっている。

「JR九州は直近の23年4-9月期決算の最終利益が同期としては過去最高となるなど、JR会社のなかでは健闘しているほう。だが、鉄道事業はコロナ禍前の18年同期の約9割にとどまっており、コロナで人流が急減した20~21年度は赤字に陥ったこともあり、JR九州が強い危機感を持つのは当然。廃線の議論は決定に至るまで数年単位の長い時間を要するため、将来に向けて不採算路線の議論開始に向けて地ならしを始めていきたいところだろう」(鉄道会社関係者)

 別の鉄道会社関係者はいう。

「肥薩線は全長124kmで、なかには輸送密度が100人程度の区間もある。そのような路線の全線復旧に200億円以上の税金を投下することに経済合理性があるのかといわれれば、疑問があるのは確かだ。ただ、これだけの長さがある路線の各区間をすべてバス輸送に置き換えるのは現実的には難しく、バス業界も深刻な運転手不足が進んでおり、将来的にバス輸送が継続されるとは限らない。地元市町村が存続を求めるのは理解はできるが、ヒトとカネに限りがある以上、思い切った判断を求められるケースもあるだろう」

(文=Business Journal編集部)