富士通、英国で排除の動きか…システム欠陥で数百人が冤罪=ホライゾン事件

富士通、英国で排除の動きか…システム欠陥で数百人が冤罪=ホライゾン事件の画像1
富士通本社が入居する汐留シティセンター(「Wikipedia」より/Kakidai?)

 富士通の英国子会社が開発・提供していたシステム「ホライゾン」の欠陥が原因で、英国の郵便局会社ポスト・オフィスの郵便局長ら700人以上が詐欺や横領などの罪を着せられ起訴された一大冤罪事件。英国内でこの問題への関心が高まり、英国政府が被害者への補償に向けて動くなか、英下院委員会が富士通の幹部らに証言を要請していることがわかった。英国内では富士通の責任を問う声が高まっており、政府内では被害者へ支払う賠償金の一部負担を富士通に求める動きも出ている(9日付ブルームバーグ記事より)。英国の政府系システムでは富士通製のものが数多く採用されており、2012年以降に富士通が英国の公共部門から受注した金額は総額68億ポンド(約1兆2500億円)にも上るとされるが(同記事より)、今後は新規採用の見合わせ、さらには英国市場からの富士通の排除というシナリオも現実味を帯びつつあるという。

 ホライゾン事件が表面化し注目され始めたのは2019年、英国高等法院で行われたポスト・オフィスへの集団訴訟がきっかけだった。この裁判でホライゾンの欠陥により正確な取引の処理、記録ができなかったことが認められ、高等法院はポスト・オフィスに対して、郵便局長555人への5800万ポンド(約86億8270万円)の支払いを命令。その後、次々と郵便局長らへの有罪判決が取り消され、現在、政府が調査および補償への動きを進めている。

「英国に工場を持つトヨタ自動車などの製造業をはじめ、英国に進出している日本企業への影響も懸念される。特に英国内で約2000両の鉄道車両を運行させている日立製作所など、公共インフラ分野に深く入り込んでいる日本企業への風当たりは強くなり、今後のビジネスにおいて悪影響を受けかねない」(全国紙記者)

富士通SEの退職理由が壮絶…メモリ4GBのPCで開発、ひたすら進捗会議

 このホライゾン事件とはどのような内容なのか。当サイトは1月1日付当サイト記事『富士通が担当の郵便局システム不具合で700人が無実の罪で犠牲…ホライゾン騒動』で詳細を報じていたが、改めて以下に再掲載する。

※以下、数字・肩書・時間表記等は掲載当時のまま

――以下、再掲載――

 富士通が担当した英国の郵便局会社、ポスト・オフィスの会計システム「ホライゾン」によって、なんとイギリス史上最大の冤罪事件といわれる騒動が起こっていた。2000年から14年の間に郵便局長700人以上が、無実であるにもかかわらずホライゾンがきっかけで窃盗や不正経理の罪を着せられた。ホライゾンでは、送金の中断、突然の電源断、画面のフリーズなどの障害・不具合が多発するという報告が確認されていたものの、ポスト・オフィス側はホライゾンに問題はなかったと一蹴していたが、この騒動により離婚や破産、自殺する元郵便局長もいたのだ。

 本事件の転機となったのは、19年に英国高等法院で行われたポスト・オフィスへの集団訴訟。この判決により、ホライゾンにはシステム上のエラーやバグ、動作不良が存在し、正確な取引の処理、記録ができなかったことが認められた。高等法院はポスト・オフィスに対して、郵便局長555人への5800万ポンド(約86億8270万円)の支払いを命じた。

 その後、20年12月には6人の有罪判決が取り下げられ、21年4月にも高等法院の上級裁判所にあたる英国控訴院が39人の有罪判決を取り下げた。その後も判決は続き、22年2月17日現在、72人が有罪判決を取り下げられている。

 英公営放送・BBCが「英国で最も広範な司法の誤審」と呼ぶホライゾンスキャンダル。当初、富士通側には責任はないとされていたが、高等法院の判事は裁判時に富士通側の出した証拠に不備があるとし、調査不足を指摘。被害者のなかにも富士通の責任を求める声は少なくない。22年2月からは本事件をめぐる公聴会も開催されており、ポスト・オフィスをはじめ、富士通と英国政府がシステムの欠陥を認識していたかについて注目が集められている。