【AIで雇用が奪われるのは間違い!】ジェンスン・ファンが台湾のコンピューテックスで語ったこと…NVIDIAの広がるAI戦略とは?

2026.07.17 Wedge ONLINE

 毎年開催されるアジア最大のICT関連見本市、台湾のCOMPUTEX TAIPEI(以下、コンピューテックス)は、例年ほとんどがNVIDIAのCEO、ジェンスン・ファン氏の基調演説で幕を開ける。コンピューテックス開催に先立って台湾入りしたファン氏を一目見ようと空港には大勢が集まり、まさにスーパースター状態だ。

 今年は6月2日の11時に台北のコンサートホールで開催された同氏の演説は、事前申込制でかなり早くに満員御礼の状態で、開場2時間前でもすでに長蛇の列ができていた。

開園2時間前にも関わらず、長蛇の待機列となっていた(筆者撮影、以下同)
人で埋め尽くされたコンサートホール前の様子

 演説はまずAIによって起こされる革新的技術を紹介するビデオから始まった。医療、ナノテクノロジーから宇宙開発、ヒトと協業するヒューマノイドなど、あらゆる分野でAIトークンの重要性が高まっていることが強調された。

 続いて登壇したファン氏は、まず台湾のAI関連エコシステムにおける重要性を強調し、NVIDIAと関係のある各企業の代表を人形にして紹介、「台湾のスーパースター達」と賞賛した。

台湾のスーパースターとのチームワークを強調した

 ファン氏がまず強調したのは、「AIによって雇用が失われる、というのは間違いだ」という認識だ。なぜならAI関連の仕事は今後等比級数を超えて増加するため、ソフトウェアエンジニアの需要はますます高まり、それが社会全体に大きな恩恵をもたらすためだという。ホワイトカラーが減少する、という懸念には応えていないものの、AIが実用的になるにつれトークンが利益を生み出すことに産業界全体が気づき始め、さらに需要が加速する、という見通しを語った。

 自社の製品としてはじめに紹介されたのが新しいAIインフラのためのチップシステムであるVera Rubin(ベラ・ルービン)だ。これまでGPUに注力してきたNVIDIAだが、今後はより効率的なインフラの指揮者としてCPUの重要性が高まる、と語る。また予想される膨大なデータ処理のためにメモリの需要も高まっていく。

 ちなみにフアン氏はコンピューテックスの会期後に韓国を訪れ、SKハイニックス、ネイバー、斗山などの大手企業と主にメモリの分野でパートナーシップを組み、大規模AIデータセンター構築を行うことも明らかにした。

庶民的な感性を持つテック界のスーパースター

 この会合が大衆的な食堂でサムギョプサルを囲んで行われたことが大きく報道されたが、フアン氏は台湾でも庶民的な食べ物が好みのようだ。演説の最初の方では「台湾のAIエコシステム構築のための重要なパートナー」と多くの企業名が並べられたが、「最も大切なパートナー」とフアン氏が指さしたのは台北の庶民的な食堂名だった。

台北の食堂を重要なパートナー、と名指して会場を沸かせるファン氏(コンピューテックスが公開した映像より引用)

 このようにファン氏の演説はところどころにユーモアが混じる内容で、会場の反応が薄いと「ここは拍手しても良いところだよ」と聴衆との一体化が求められる。2時間近い長丁場の演説でも人々を飽きさせない工夫がフアン氏の人気の秘密のひとつかもしれない。

 2時間の演説を集約すると、「AIプラットフォームの進化」「フィジカルAIとロボティクス」「エコシステムとサプライチェーン」という3つのテーマになるが、そこに共通しているのは「NVIDIAのシステムがいかに省電力化を果たし、作業効率を高め、デジタルツインにより稼働シミュレーションや顧客によるカスタマイズを行うことで設置から稼働までの時間を短縮するか」という視点だ。