日本のアニメは人気なのに、なぜクールジャパン機構は大赤字なのか?繰り返される官民ファンドの失敗

2026.07.07 Wedge ONLINE

 日本のコンテンツ分野の海外売上の合計は6兆円を超えた。これは、映画(実写)、テレビ番組、アニメ(劇場・放送・配信等と商品化ライセンス)、家庭用ゲーム(ソフト販売/オンライン)、スマホ・PCゲーム、出版(マンガが主)の合計である。うち、アニメの海外売上が前年比26%の大幅増で約2.2兆円となり、全体の拡大を支えたという(「2024年の日本と世界のコンテンツ市場の規模と日本のコンテツの海外売上の調査結果」ヒューマンメディア2025年11月28日)。

(Phillip Horiba-Maguire/gettyimages)

 日本のアニメなどは世界で評価されているのに、日本のコンテンツを海外に広げる目的で設立した官民ファンド「海外需要開拓支援機構」(クールジャパン機構)は、2025年度の決算で累積損失が540億円になった。巨額の赤字により、政府は今後、機構の廃止や他のファンドとの統合を前提に、応策の具体的な検討に入るという。

クールジャパン機構は何をしてきたか

 クールジャパン機構は、日本の魅力ある商品やコンテンツの海外展開を促進するため、民間企業と共同で総額2040億円の事業に資金を投じてきた。例えば、クモの糸由来の人工のタンパク質素材を開発するスタートアップ「スパイバー」に累計140億円、三越伊勢丹ホールディングスと共同展開したマレーシアの百貨店ISETAN The Japan Storeに約9.7億円、日本のテレビ番組を海外へ発信するインドネシアの「WAKUWAKU JAPAN」に約44億円などである。

 ところが、スパイバーは私的整理、ISETAN The Japan Storeは閉鎖、「WAKUWAKU JAPAN」放映中止に追い込まれた(みんなの政治ナビ「クールジャパン機構のメンバー構成は?失敗例と成功例から見える課題」による)。

 そもそも、スパイパーやマレーシアの百貨店への投資がなんでクールジャパンなのか理解しがたい。「WAKUWAKU JAPAN」はクールジャパンと言えるかもしれないが、ストリーミング配信が主流になっている時に衛星放送で配信しようとし、その設備に多額の投資を要したことが損失の主因である。

余計なことをやり過ぎた

 この結果は、クールジャパンが本来の仕事をしていればそんなことにはならなかったと言えるかもしれない。そもそも、ドラマ・アニメ・バラエティを現地語の字幕・吹き替えで届ける、日本のコンテンツに関心を持ち国内でビジネスにしたい人に売り込む、同時に海賊版を取り締まり、知的財産権を確保するという仕事だろう。それだけなら、そんなにお金はかからない。大きな金額にするために大プロジェクト化して失敗したのだろう。

 つまり、クールジャパンを世界に売り込むために巨額の予算が必要だと喧伝して、予算を取った以上は使わなければならないとなって失敗したのだろう。また、巨額の予算を管理運営するための費用も巨額となる。

クールジャパン機構の経費は、法人事業税(外形標準課税)や投資収益に対する外国での課税はじめ増加傾向にあった(経済産業省「株式会社海外需要開拓支援機構について」より) 写真を拡大

 ファンド設立時からの累積必要経費は238億円になるという。内訳としては、人件費(101億円)、調査研究費(25億円)、地代家賃等(23億円)などである(経済産業省「株式会社海外需要開拓支援機構について」26年2月)。

本来のことをやろうとしても大失敗

 クールジャパン機構は、余計なことをやり過ぎて失敗したと言えるだろうが、本来のことをしようとしてもうまくいかなかった。クールジャパン機構ではないものの、官民ファンドの産業革新機構が22.1億円出資したANEW(株式会社All Nippon Entertainment Works、11年設立)という会社がある。「日本の物語のハリウッド映画化を促進することを通じて、日本の映画、放送コンテンツなど日本の知的財産の海外展開の成功事例を加速させる」ということなので、まさにクールジャパン機構が出資するに相応しい会社である。ANEWが設立された後の13年にクールジャパン機構が設立されたので、出資がなされなかっただけだろう。