総合政策学部系の学部の学生は、企業からどのように評価されているのか。
「幅広い業界に就職しています。就職先は大学によって差があり、難関大だと大企業が多くなります。企業からすれば、学部名からどのようなことを勉強したのか想像できなくても、そこは気にしません。特に慶應大学や中央大学、関西学院大学などの難関大であれば、『よく分からないけど、要するに“なんでも学部”なんでしょ』『社会科学系の教養学部みたいなものか』などと考えています。面接で学部名については細かく聞きません。聞くとしたら、ゼミなどでどのような勉強・研究をしたか、などでしょう。中堅以下の私立大学でも、学生有利の売り手市場が進んでいる以上、企業側は学部名についてあれこれ気にする余裕がありません。そうなると、あとは学生の志望や実力によって決まることになります」(石渡氏)
総合政策学部のなかでもトップの座に位置するのが慶應大学のSFCだ。大手予備校・河合塾の「2025年度 入試難易予想ランキング表(私立大)」の「総合・環境・情報・人間学系」学部では偏差値ランキングで1位(70.0)となっているが、近年では人気低迷といわれることもある。実際には人気はどのような状況なのか。また、就職や将来のキャリア形成などの観点でみると、慶應SFCはお薦めといえるのか。
前出・石渡氏はいう。
「総合政策学部の入試倍率は2015年は6.3倍、19年は8.5倍でした。24年は5.4倍になっています。志願者データからは人気が落ちた、とする見方はできるでしょう。ただ、24年の倍率低下は慶應SFCだけでなく他大学も同様です。首都圏の私立大学は2010年代半ばからコロナ禍前まで人気が過熱している状態でしたが、コロナ禍で落ち込み、現在は2010年代半ばと同じ水準に落ち着いています。
偏差値としては河合塾の公表データでは2015年に72.5、24年は70.0でした。ベネッセコーポレーション『進研模試』偏差値だと12年は78、24年は80です。偏差値も志願者データも多少の上下はありますが誤差の範囲で、私はこれをもって人気低迷と断じるのは違うと考えます。
慶應SFCは開設後の1990年代から2000年代にかけては独特な教育が評価されていました。その後、早稲田大学が追い上げてくると、慶応SFCの独自性が薄まっていきます。さらに立地の悪さを敬遠する受験生も2010年代以降、増えています。そのため、受験生が慶応SFCから早稲田大学など他大学に流出していることは確かです。その半面、慶應SFCの教育を評価する意見も根強く、立地の悪さも『離れたキャンパスで広く学べるなら構わない』とする受験生も一定数います。就職実績についても堅調に推移しており、幅広く学びたい受験生には適した学部といえるのではないでしょうか」
慶應大学総合政策学部卒の30代男性はいう。
「たとえば将来はアフリカ開発に従事したいと考える学生がいたとすると、そのために必要な経済学、国際政治学、アフリカ政治・経済、外国語などあらゆる分野の授業を、三田キャンパスの学部のものも含めて自分で選択して履修することが可能です。起業を目指す学生であれば、実際に起業を経験した人やビジネスの経験が豊富な人が教員陣には数多くいるので、学生の側から積極的に動けば有益な情報やアドバイスを得ることも可能です。つまり、『自分はこれがしたい』という明確かつ強い意志・目標を持つ学生や、自ら課題を発見して解決しようと行動する学生にとっては、期待に120%応えてくれる環境が整っているので、素晴らしい学部だといえます。高い志を持つ学生や起業して会社を経営する学生、夜は東京に出てイベントの企画・運営をしている学生、有名タレントなど、個性の強い学生が多いため、日頃からそうした同世代の人たちと接することができるというのも、SFCの大きな魅力です。