「作業員の確保難で大型プラントの定期修理ができない」…三菱ケミカルG、自社開発システムを業界他社にも展開する理由

 工事進捗を可視化することで、作業員の待ち時間を少なくし、現場作業に注力できる時間を長くする工夫を行ったりしています。例えば、従来は日々の工事は弊社の運転管理部門及び設備管理部門の担当者が現場の安全措置状況と前日の工事日報の内容を照合して、紙に印刷された着工許可証にハンコを押すことで協力会社作業員の工事着工を許可していました。定期修理時はプラントによっては数百件の工事着工を一つひとつ確認するため、着工までに朝1時間の待ち時間が発生することも珍しくありませんでした。この着工許可証にRIFDを貼り付け、安全確認に必要な情報を連携させ、多数の工事の着工可否を瞬時に仕分けできる受付システムを構築したことで朝の着工待ち時間が大幅に削減されました。

 もっとも動員数の減少につながったのが、日立ソリューションズと共同で開発した工程管理ツールの導入です。計画段階で安全措置にかかる期間、複数の協力会社に実施いただく各種工事の期間を可視化し、精緻に見直すことが工程短縮に大きく寄与しました。このツールは工事実行段階での効率化にも役立ちました。従来は協力会社の方々が作成した当日の工事進捗と翌日の予定工事が記載された工事日報を使用して、毎日夕刻に運転管理部門及び設備管理部門の担当者と協力会社の3者で調整会議を実施していました。工事の作業単位での進捗をシステムに入力、管理することで、工事日報の作成、詳細な調整会議を実施しなくても工事進捗をリアルタイムで把握することが可能となりました。その情報は協力会社間でも共有され、作業終了が次工程を担当する協力会社の担当者へメール送信されることで無駄なアイドルタイムが削減され作業員の稼働率の向上につながりました。

 このほか、作業員の方々のヘルメットにビーコンデバイスをつけて、プラントの入り口に受信機を設置し、どの作業員が今、どこでどういった作業に従事しているのか、もしくは事務所に戻って待機しているのかを把握できるようにもしました。

 こうした取り組みによって、無駄な時間を大幅に削減することで、弊社も協力会社様も助かっています。もちろん工期の圧縮やコスト削減といった効果もありますが、何よりも定期修理は人集めに本当に苦労しますし、『もうこのままだと、定期修理ができなくなってしまう』という危機感を抱いていたので、少ない人数で定期修理をできるような素地ができつつあるという点が大きいです」

定期修理をめぐる課題は業界共通

 前述のとおり、三菱ケミカルグループは自社で導入しているこのプラットフォームを、石化業界の競合他社にも展開していこうとしている。その理由はなんなのか。

「大前提としては、定期修理をめぐる課題は業界共通のものであり、一社だけで解決できるものではないという点があります。業界全体で取り組めば、協力会社の方々も同じツールを使用することで手間が省け、業界全体で効率化が進むと考えられます。また、より使い勝手の良いシステムになっていくのではないかと思います。どのようなプラットフォームをつくるのかという検討業務の負荷は軽くはないですし、各社それぞれ進んでいる領域などを持ち寄って協力して開発していったほうが、業界全体にとってプラスの効果が大きいと考えています」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)