この機能はどのような場面で役立つのか。伊藤氏は大きく3つの分野を挙げる。
1. 教育分野
講義ノートを解説動画にして、学生が授業前に予習できる。授業の効率化や学習の理解促進につながる。
2. ビジネス分野
会議資料や調査レポートを短い動画にまとめ、チームで共有する。会議時間の短縮や意思決定のスピードアップが期待できる。
3. 行政・医療分野
膨大なガイドラインや健康指針を市民に分かりやすく伝える。文字情報だけでは理解しづらい内容を「見て聞ける」形式に変換できる。
動画だけでなく、音声解説やマインドマップも生成できる点も評価が高い。
「同じ資料から、映像で直感的に理解する、音声で移動中に聴く、マインドマップで全体を俯瞰する、といった使い分けが可能です。これまで外注しなければ難しかった多様な表現形式を、社内で即座に内製できるのは大きな変化です」
特にマインドマップは、レポート全体の構造をひと目で把握できるため、概要確認やプレゼン準備での論点整理に役立つ。
ビジネスの現場において「スピードとコスト」は常に課題である。Video Overviewsはその両方を解決する可能性を秘めている。
・時間短縮:数週間かけて外注していた動画コンテンツが、その日のうちに完成
・コスト削減:ナレーションや動画編集を外部に依頼する必要が減少
・知識共有の多様化:動画・音声・マインドマップという複数の入口を用意
情報をより多くの人に、より早く、よりわかりやすく届けられるようになる。
現状でも十分に実用的だが、伊藤氏はさらなる進化の余地があると指摘する。
・ナレーションのトーン(フォーマル/カジュアル)の選択
・スライドデザインのバリエーション拡充
・重点的に解説してほしい部分を柔軟に指定できる機能の強化
これらが実装されれば、教育・ビジネス・公共の場での活用範囲はさらに広がるだろう。
NotebookLMの「Video Overviews」は、単なるAI要約の枠を超え、情報を「どう伝えるか」という次元に踏み込んだ機能だ。
伊藤氏は次のように結ぶ。
「外注で数週間かかっていた解説コンテンツを、社内でその日のうちに動画・音声・マインドマップといった形で生成できる。これは新しい知識共有ツールと言えるでしょう。教育からビジネス、行政まで、情報の伝え方を根本から変えるポテンシャルを感じます」
忙しいビジネスパーソンにとって、長文資料を読む時間を削減し、理解を加速させる「解説動画生成AI」。その存在感は今後ますます大きくなっていくはずだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=伊藤朝輝/システムエンジニア、ライター)