ZOZO色を隠したら読者が激増…オウンドメディア『fashion tech news』成功の裏側

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「fashion tech news」公式サイトより

●この記事のポイント
・ZOZO NEXTが運営する「fashion tech news」は研究者目線からユーザー目線へ転換し、PV300%増を達成。
・自社色を出さず中立性を重視、業界全体を深掘りする姿勢が読者拡大と事業推進の好循環を生む。
・将来的には「ファッション×テクノロジー」で第一想起されるメディアを目指し、ファン基盤拡大へ挑む。

 ファッションとテクノロジーを掛け合わせた専門メディア「fashion tech news」が、急速に存在感を高めている。2018年に立ち上がった当初は、研究成果をアカデミックに紹介する色合いが強かったが、現在はPV数・UU数ともに大幅に伸び、ファッションとテクノロジーの情報を深掘りする媒体として高い評価を得ている。運営するのはZOZOグループで研究開発を担うZOZO NEXTだ。

 編集長の玉井泰史氏に、その変遷と成長の理由、そしてオウンドメディアの役割について伺った。

●目次

研究者目線からユーザー目線へ

「fashion tech news」のスタートは、ZOZO NEXTの研究成果を紹介する、いわば“論文寄り”の内容だった。

「当初は研究者向けの記事が中心で、一般ユーザーには少し距離のある内容でした」と玉井氏は振り返る。

 しかし、同氏が編集に携わるようになってから大きな方針転換を行った。例えば、素材の研究成果を単に伝えるのではなく、「その素材が実際のプロダクトに使われ、生活にどのように役立つか」という視点を盛り込むようにしたのだ。この変化がユーザー層の拡大を後押しし、現在では、UU数は前年比130%、PV数は300%という成長を記録した。

 編集部は紙媒体出身の編集者、ウェブ媒体出身者、そして編集とは関係のないキャリアを歩んできたZOZO NEXTの社員など多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されている。記事の企画は各メンバーが持ち寄り、最終的に玉井氏が判断する。

「私たちの軸は、ファッションとテクノロジーです。特に“素材”や“機能性”にフォーカスし、深掘りすることを重視しています。単に新商品を紹介するのではなく、裏にある技術や歴史、カルチャーまで含めて取材しています」

 夏に人気が高まる日傘の技術進化や、ブランドの歴史を遡って現在のプロダクトにどうつながっているかといった記事が好評だという。

 現在の読者層は20代後半から40代前半、特に30代半ばの男性が多い。ファッション業界関係者に加え、IT業界の読者も多く、ファッションとテクノロジーという領域横断的なテーマが刺さっていることが分かる。

 当初は研究者向けだった読者像が、一般ユーザーや業界関係者へと広がったことで、メディアとしての存在感も増していった。

あえてZOZO色を出さない理由

「fashion tech news」の特徴のひとつが、グループ会社のZOZOや運営元のZOZO NEXTの名前を前面に出さないことだ。ZOZOTOWNへのリンクも基本的には張られていない。

「オウンドメディアは自社の宣伝色が強くなりがちですが、それだと自社製品に興味がない人には読まれません。だからこそ、業界全体の情報を中立的に扱うことを重視しています。その結果、自社の研究開発プロジェクトが自然と認知され、他企業や自治体とのコラボレーションにもつながっているんです」

 この姿勢により、ZOZO NEXTのR&D(研究開発)活動を知るきっかけが生まれ、結果的に事業推進の後押しにもなっている。