●この記事のポイント
・大手ゼネコンが資材高騰下でも最高益を更新。需要の強さと契約見直しにより、利益構造が大きく改善している。
・都市再開発や半導体工場の建設需要が追い風となり、ゼネコンが価格交渉力を高めたことで適正価格での受注が定着し始めた。
・技術の希少性と供給制約が交渉力を押し上げ、従来の“受注ほど赤字”の構造から脱却。業界は持続的収益体質へ転換している。
大手ゼネコンが“受注すればするほど赤字になる”とさえ言われた従来の構造を脱し、コスト高の逆風下でも過去最高益を見込む企業が相次いでいる。鹿島建設は今期も高水準の増収増益を予想し、大成建設は純利益が前期比353%増という急回復を見込むなど、業界全体に明るい転換点が生まれている。背景には、建設需要の高止まりに加え、ゼネコン側が追加費用を正当な価格として請求できる契約構造へと踏み出した“静かな構造改革”がある。
●目次
建設業界の業績に明確な“復調”の兆しが出ている。大成建設と鹿島建設は、今年度の通期純利益が過去最高を更新する見込みと発表し、業界全体に追い風が吹く。大林組は今年度中間決算で純利益が前年同期比43%増、清水建設も4.3倍の大幅増益を記録するなど、主要各社が好調だ。
実際、鹿島建設は2025年3月期の営業利益が前期比10%増を見込み、大成建設は営業利益が1201億円と前期比353%増を予想している。資材高騰や人件費上昇が続く環境にもかかわらず収益は改善し、業界にはこれまでにない明るさが生まれている。
この動きが注目されるのは、建設業界が長年“コスト高と利益率低下”に悩まされ、経営構造の脆弱性が指摘されてきたためだ。大規模再開発や半導体工場建設など建設需要は旺盛である一方、資材価格の急騰、労務費の上昇、残業規制(2024年問題)など、利益を圧迫する要因が重なったことで、“業界全体が赤字体質に陥る可能性”さえ懸念されていた。
こうした環境下で大手各社の利益が急回復していることは、単なる一時的な好況ではなく、業界全体の収益構造が転換しつつあることを意味する。これは不動産開発、都市政策、雇用構造にも大きな影響を与える重要な変化である。
(1)堅調な建設需要
第一の要因は、国内外で建設需要が力強く推移していることだ。首都圏の大規模再開発、老朽化施設の建て替え、オフィスビルの複合開発など、都市インフラの再編が加速し、大型案件の進捗率が高まっている。また、半導体工場やデータセンターなどの企業投資が活発化し、民間工事の受注環境が改善した。
公共投資も国土強靭化計画や防災・減災対策の継続により底堅く推移しており、売上高を押し上げている。さらに、海外事業の拡大も成長を下支えし、鹿島建設などは海外での受注増が全体の増収に寄与した。需要の強さは、利益構造の改革を後押しする前提条件となった。
(2)契約構造の転換
次に、利益回復の核心となるのが“契約の見直し”だ。これまで建設会社は、納期延長や資材高騰によって追加工数が発生しても、受注側がそのコストを負担する慣行があった。しかし、需要が旺盛でゼネコンが案件を選別できる立場へと移行したことで、契約書に追加費用を請求できる条項を盛り込む動きが広まった。「正当なコストは正当に請求する」という、他業界では当たり前の仕組みが、建設業界にも広がり始めている。価格転嫁が進んだことで、採算性の改善が一気に進み、利益率が回復へと向かった。