Kimochiruはもともと店舗接客を想定したサービスだが、ローンチ後まもなく大きな転機が訪れる。X(旧Twitter)でサービスを紹介した投稿を、ポーカー関連の人物が偶然見つけ、「これはポーカーに向いている」と指摘したのだ。
ポーカーでは、プレイヤーの体験価値がディーラーの技術と接客品質に大きく依存する。カードさばきの美しさ、判断の速さ、場の空気づくりなど、ディーラーの力量は競技の快適性に直結する。しかしプレイヤーからの評価が可視化される仕組みは、これまでほとんど無かった。
そこでぺこりは、Kimochiruをポーカー専用の「ナイスディーラーカード」へと発展させ、2024年6月にサービスを開始。その翌月には、国内最大級の大会シリーズが同カードを公式チップ(感謝カード)として採用することが決定した。
このスピード導入が市場の反応を一気に押し広げた。大会では、約9%のプレイヤーが初回から課金してカードを使用し、SNS上には「ナイスディーラーカードをもらえた」と投稿するディーラーが次々と現れた。


投稿には大量の“いいね”が付き、可視化されることでディーラー自身のモチベーション向上にもつながっている。
カードをもらうことで、ディーラーは次のような効果を得られる。
・自分の働きが評価されている実感
・SNSで成果を発信できる可視化効果
・他店舗・大会からのスカウト可能性の向上
実際、カード導入後は地方大会からの問い合わせも増え、20店舗以上から導入希望が届いているという。
三宅氏いわく、ポーカー業界ではディーラー不足が深刻化している。フリーディーラーとして活動する人も増えているが、スキルに対する評価制度がないため、「実力が給与に反映されにくい」構造が課題だった。
ナイスディーラーカードは、そこに新しい報酬体系の芽を生んでいる。ある大会では、トップ層のディーラーが 一大会で2万ポイント以上を受け取った例もある。税務上の取り扱いが必要になる可能性はあるものの、可視化されることでプレイヤーからの信頼獲得にもつながり、ディーラーの市場価値を高めている。
ぺこりは、今後「ナイスディーラーだけを集めた特別大会」の開催も構想しているという。これは単に報酬を増やすだけでなく、ディーラーという職業自体の魅力を高め、業界全体のサービス品質を底上げする試みだ。
三宅氏は、ナイスディーラーカードの次の展開としてインバウンド市場を挙げる。
訪日外国人は2024年に4000万人規模まで回復し、2030年には政府目標で6000万人が想定される。円安と物価差から、日本のサービスは「安くて質が高い」という評価が定着し、チップ文化が根付くポーカープレイヤー以外でも「感謝の気持ちを渡したい」というニーズが高まる可能性がある。
インバウンド市場は、ポーカー以上に巨大で、成功すれば短期間で普及が進む可能性がある。
ポーカーを起点に始まったサービスは、次のような本質的な構造を持っている。
(1)これまで可視化されなかった“接客の質”を評価可能にする
日本のサービス業は4000万人の従事者がいる巨大産業だが、評価制度は曖昧で、給与構造も硬直的だ。カードによる評価は、これまで可視化されなかった個人の接客スキルの差を明らかにする。
(2)消費者側の“承認したい欲求”と整合するUI/UX
現金よりも渡しやすく、SNSで共有しやすいことから、消費者側の心理的負担を軽減する。
(3)分散型の普及方式がスケールしやすい
導入不要のカードであるため、ネットワーク効果が起きやすく、ニッチ市場からマスマーケットへ拡大する可能性がある。