トヨタ「EV消極」戦略の完全勝利…欧州2035年禁止撤回で露呈したEVバブルの末路

「トヨタはEVブームでも既存サプライヤーを切らなかった。結果として、供給網が崩れず、いまの需要変動にも耐えられる」(荻野氏)

日本でも始まる「EV特権」の終焉

 EV逆風は、国内政策にも波及し始めている。政府は2028年以降、これまで免税・減税の対象だったEVに対し、車両重量に応じた新たな税負担を課す方針を検討中だ。最大で年2万4000円程度の重量税上乗せが想定されている。

「環境に良いから税金が安い」というEVの特権は終わり、「重い車は道路を傷めるから負担せよ」という、内燃機関車と同じ公平な土俵に立たされる。

 こうなれば、価格が手頃で燃費が良く、リセールも安定しているHV・PHVの優位性はさらに高まる。政策面ですら、トヨタに追い風が吹き始めているのだ。

豊田章男氏が「独り」で戦っていたもの

 トヨタの豊田章男会長は、かつてこう語っていた。

「BEVがどれだけ進んでも、世界全体のシェアは3割程度にとどまる」
「敵は炭素であって、内燃機関ではない」

 当時、この発言は「EVに後ろ向き」「変化を恐れている」と批判された。しかし今、その主張が現実になりつつある。

 トヨタはHV、PHV、EV、水素、合成燃料――あらゆる選択肢を同時並行で磨き続けてきた。世界がEV幻想から覚めたとき、唯一“戦える武器”をすべて揃えていたのがトヨタだった。

 欧米メーカーが巨額赤字の中でHV開発へ“先祖返り”を試みる一方、トヨタはすでに次世代エンジンや全固体電池の量産化フェーズに踏み込んでいる。

「トヨタの強さは、技術そのもの以上に時間を味方につけた戦略にある。短期の株価や政策に振り回されなかった」(同)

 トヨタの勝利は、「EVブームの終焉」という偶然の産物ではない。政策や流行に迎合せず、世界の顧客が本当に求めるものを見極め続けた経営判断の勝利である。

 かつて「周回遅れ」と嘲笑された王者は、今、誰の影も踏まぬ荒野を独走している。そしてこの逆転劇は、自動車産業に限らず、すべての製造業に「ブームへの向き合い方」を問い直す教訓を突きつけている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)