オラクルは“AIバブル崩壊”の引き金を引くのか…巨額投資が招く信用収縮リスク

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●この記事のポイント
・オラクルの巨額AI投資とFCF赤字が深刻化し、信用格付け悪化の懸念が浮上。AIバブルの“初期亀裂”として市場全体の資金循環に影響する可能性が指摘されている。
・設備投資の急増で負債と減価償却が膨張し、利益率は低下傾向。需要は強い一方、資本集約型企業への転換で財務柔軟性が失われ、調達コスト上昇リスクが高まっている。
・今後は売上成長よりFCF改善と負債管理が焦点。格付け動向や資金調達環境が変化すれば、オラクルはAI覇権争いの“主役”から市場不安の引き金となる可能性がある。

 2025年12月、オラクル(Oracle Corporation)が公表した2026年度第2四半期決算(Oracle IR資料)は、ウォール街に予想以上の衝撃を与えた。株価は発表翌日に11.53%急落。市場の懸念は「業績の一時的な不調」ではない。

 本稿では、この決算が示唆した財務リスクの本質、特に市場が注視する「信用格付けの行方」を中心に、専門家の見解とともに分析する。

●目次

“高収益ソフトウェア企業”からの不可逆的転換

 オラクルは長年、データベースとERPを主力とする「高利益率・低資本支出モデル」で高いキャッシュ創出力と株主還元を維持してきた。

 しかし、今回の決算は、同社が構造的なビジネスモデル転換に踏み切ったことを明確にした。

(1)資本支出(CapEx)の爆発的増加
 ・2Qだけで 約120億ドル(前年同期比+約50%)
 ・通期CapEx見通しを 500億ドルへ引き上げ(IR資料より)

(2)フリーキャッシュフロー(FCF)の急激な悪化
 ・四半期で ▲100億ドル
 ・ソフトウェア企業としては極めて異例のキャッシュバーン

(3)経営陣の説明
 ラリー・エリソン会長は決算説明会で、「AI需要は供給を大きく上回る。我々は能力を増強し続ける必要がある」と強調した。

 確かに、同社のRPO(Remaining Performance Obligations)は前年同期比で大幅増。需要が旺盛であるのは事実だ。

 しかし、投資家を震撼させたのは、“需要に応えるためなら財務体質を犠牲にしても構わない”という経営判断の大胆さである。

市場が最も恐れる「3つの構造的リスク」

 以下の3つは、単なるコスト増では片付かない、オラクルの根本的なリスクである。

(1)信用格付けと流動性リスク(Credit & Liquidity Trap)

 決算資料と有価証券報告書によれば、オラクルのネットデット(純有利子負債)は増加基調にあり、今回の巨額投資でさらに拡大する見通しだ。

■ キャッシュバーンの構造
・年換算で400億ドル規模の外部調達が必要となる計算
・営業キャッシュフローを超える投資ペース

■ 格付けへの圧力
 S&Pは2025年9月のレポートで、オラクルの格付けをBBB+(見通し:安定的)としていたが、今回の決算で「財務規律の緩み」が現実味を帯びてきた。

 格下げ(ダウングレード)が発生すると、以下の“負の連鎖”が起こる。
・調達コストの上昇(社債利回りの急騰)
・純利益の圧迫(支払利息が増加)
・一部の年金基金・機関投資家が強制的に売却(投資適格未満は保有不可)

「オラクルは、ソフトウェア企業の常識とかけ離れたレバレッジモデルに踏み出しています。投資の規模自体は戦略的に理解できるものの、問題は“財務のクッション”がほとんど残っていないことです。格付けが一段階落ちただけで資金調達環境が一気に悪化する可能性があります」(金融アナリスト・川﨑一幸氏)