メタ「著作権侵害の組織的黙認」で集団訴訟の衝撃…AI開発競争に急ブレーキの懸念

メタ「著作権侵害の組織的黙認」で集団訴訟の衝撃…AI開発競争に急ブレーキの懸念の画像1

●この記事のポイント
・メタが著作権侵害を黙認したとして米国で集団訴訟。DMCA削除要請の機能不全が露呈し、SNSの収益構造が問われている。
・無断転載の放置だけでなく「本家が凍結される」逆転現象も問題化。プラットフォームの管理責任が司法の俎上に載った。
・判決次第では生成AIにも波及。権利処理コスト増が開発競争にブレーキをかけ、AI市場のルールが変わる可能性がある。

 FacebookやInstagramを運営する米メタ(旧Facebook)に対し、米国で新たな集団訴訟(クラスアクション)が提起された。原告となったのは、竜巻や巨大嵐を追い、命がけで気象現象を撮影する「ストームチェイサー(嵐の追跡者)」として知られるクリエイターたちだ。

 彼らは、メタのプラットフォーム上で自らの映像が無断転載され続けているにもかかわらず、同社が著作権侵害の通報に十分な対応を取らず、侵害状態を“事実上黙認”してきたと主張する。損害賠償に加え、システム改善などの是正措置を求めている。

 本件は単なる「クリエイター vs. プラットフォーム」の紛争にとどまらない。SNSが抱える根深い構造、すなわち「ユーザー滞在時間と広告収益の最大化」を軸にしたビジネスモデルと、著作権・コンプライアンスの衝突が、司法の場で正面から問われる局面に入ったからだ。

 さらに見逃せないのは、この争点が生成AI開発競争とも接続しうる点である。著作物の取り扱いが厳格化すれば、AI開発企業やプラットフォーマーは、学習データの確保や権利処理コストの負担を避けられず、競争ルールそのものが変わりうる。

「速度」か、「正当性」か。生成AI時代の“成長至上主義”が、いま試されている。

●目次

数百件の削除要請が“効かなかった”という主張

 今回の訴訟を主導するのは、米国で著名なストームチェイサーであるブランドン・クレメント氏らのグループだ。嵐や竜巻の接近を予測し、危険地帯に入り込んで撮影する映像は、ニュース価値が高いだけでなく、研究用途や災害啓発としても社会的意義を持つ。言い換えれば彼らにとって映像は「作品」であると同時に、「生計を支える資産」でもある。

 訴状によれば、原告らはFacebookやInstagram上で自らの映像が無断転載されるたびに、米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく削除通知(テイクダウン通知)を提出してきたという。その件数は「数百件に及ぶ」とされる。

 しかし原告側は、メタがこうした通知に対し適切に対応せず、侵害投稿が残り続けたケースがあると主張している。メタの規約上、著作権侵害は明確に禁止されているものの、その運用が追いつかず、結果として侵害コンテンツが“温存”されている――。原告らの問題提起はそこにある。

 もちろん現時点で、これらは原告側の主張であり、裁判の中で事実認定が争われる。ただ、削除要請の運用がブラックボックス化していることは、長年クリエイター側が抱えてきた不満の核心でもある。

「侵害者が残り、本家が凍結される」逆転現象の深刻さ

 さらに深刻なのは、著作権対応の遅延や未処理そのものではない。原告側が問題視するのは、AIや自動検知システムの誤作動によって、侵害者側が“権利者”として扱われ、逆に正当な権利者がアカウント停止・ブロックを受けるような「逆転現象」が起きているという点だ。