東京が世界第3位の人気渡航先に…訪日客4,000万人時代、欧米富裕層が集まる条件とは

 そして何より大切なのは、これらを“ラグジュアリー仕様”にすることではない。ラグジュアリーの本質は、金箔やシャンパンではなく、体験の密度である。

「日本の観光は“説明不足”で損をしてきました。景色や寺社はあるのに、背景の語りが弱い。富裕層は、モノよりも“意味の通訳”にお金を払います。地域側が物語を言語化し、体験としてパッケージ化できるかが勝負です」(同)

 ここで見落とせないのが、観光の“質化”は現場任せでは実現しないという現実だ。交通、予約導線、多言語対応、人材育成、価格設計、受け入れキャパ、混雑管理――いずれも設計産業である。つまり、富裕層観光は「現場の努力」で勝てる領域ではなく、都市経営・地域経営の一部として設計し直す必要がある。

 宿泊税の導入、分散化の促進、公共交通の最適化、文化財保護との両立。これらは観光政策というより、都市の持続可能性の問題になってきた。

2026年、日本の観光ブランドは「真の試練」を迎える

 2025年に訪日客4,000万人を達成しても、それが単なる「安売り」の結果であれば、日本のブランド価値は摩耗する。観光が産業として成功するほど、地域の疲弊も進む。だからこそ、2026年に訪日客数が落ち着きを見せると予測される時期こそが、日本の観光産業にとっての正念場となる。

 いま求められているのは、「世界3位」という追い風を、ただの話題で終わらせないことだ。量から質へ。そして「消費される日本」から、「憧憬される日本」へ。

 そのために必要なのは、富裕層を“金づる”として扱う発想ではない。彼らが求めているのは、豪奢な装飾ではなく、精神的充足である。日本が長い時間をかけて育んできた、祈り、節度、自然との距離感、手仕事、季節――そうした価値を、現代の文脈で編集し直し、体験として届けることだ。

 2026年、日本の観光ブランドは試される。東京が世界第3位に選ばれたという期待値を追い風にできるか。あるいは、その期待に応えられず摩耗していくか。

 すべての観光事業者、自治体、交通・宿泊・文化産業に問われているのは、“数字を追う観光”を卒業し、“意味を磨く観光”へ進化できるかどうかである。そしてそれは、日本という国の価値そのものを、世界にどう提示するかという問いでもある。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)