セブン銀行ATMが国内首位4.4万台へ…ファミマ転換で「コンビニ金融」再編開始

「伊藤忠の判断は、ITプラットフォーマーが巨額の設備投資を避けてAPIで機能を外部調達する手法に近いといえます。コア以外はレバレッジをかけて外部から調達し、自社はユーザーとの接点(UI/UX)に注力する発想です」(戦略コンサルタント・高野輝氏)

セブン銀行の「真の目標」——ATMをプラットフォームに変える

 セブン銀行にとって、今回の協業は単なる設置台数の拡大にとどまらない。同社が描くのは、ATMを「現金の出し入れ機」から「街のデジタル行政窓口」へと進化させるというビジョンだ。

 その核心が「+Connect(プラスコネクト)」である。セブン銀行「+Connect」は「ATMが、あらゆる手続き・認証の窓口となる」世界を目指し、銀行やノンバンク、事業会社、行政等幅広い業界に向けて提供する各種サービスの総称であり、「誰一人取り残されない」デジタル社会の実現を目指す。

 具体的には、ATMでの口座開設・本人確認(eKYC)・ローン申込みに加え、行政機関との連携による給付金の現金受取りや税の納付まで対応が広がっている。野村総合研究所との連携では、自治体等からの給付金をマイナンバーカードで申請しセブン銀行ATMから現金を受取るサービスや、税や社会保険料の納税関連手続きの実現も構想されている。

 この+Connectを、セブン-イレブン以外の「他社の店舗」にまで拡大できるというのが今回の協業の本質だ。セブン銀行は自グループの店舗数に制約されることなく、日本全国のコンビニ網を「金融・行政インフラ」として活用できる立場を手に入れつつある。

「地方銀行の店舗削減が加速する中、セブン銀行ATMは単なる代替手段ではなく、金融包摂(フィナンシャル・インクルージョン)の担い手として機能し始めている。ファミマとの連携は、その社会的役割をさらに強化するものだ」(川﨑氏)

ローソンの独自路線——「通信×金融×店舗」の三位一体

 セブン銀行・ファミマの大連合が形成された今、コンビニATM市場は「セブン・ファミマ陣営」と「ローソン陣営」の2極構造に再編された格好だ。

 ローソン銀行は2025年3月末時点で、全国47都道府県に1万3889台のATMを設置している。台数だけで比較すれば、セブン銀行の約4万4000台に対して3分の1以下という数字になる。しかし、ローソンが目指す戦略の軸は「台数」の競争ではない。

 2024年2月にKDDIがローソンへのTOBを実施し、三菱商事・KDDIによる共同経営体制が発足。ローソン店舗というリアル接点を活かしながら、通信を軸にデジタルを強みとしたサービスを展開するKDDIとの連携強化により事業拡大を図る方向性が示されており、金融だけでなく通信、ヘルスケア、エンタメなどのサービス拡充も視野に入れる。

 KDDIが持つauスマートパスプレミアム会員(1300万人超)の顧客基盤と、ローソン銀行のATMネットワークを組み合わせた「通信×金融×店舗」の融合モデル——これがローソンの差別化路線だ。スマートフォンに習熟したユーザーへのデジタル金融サービスと、リモート接客による地域生活支援を組み合わせることで、純粋なATM台数競争とは異なる独自の生存圏を模索している。

「コンビニ=未来の金融窓口」という現実

 キャッシュレス化の進展にもかかわらず、コンビニATMの社会的価値は低下するどころか、むしろ高まっている。QRコード決済への現金チャージ需要の定着、スマホを持たない高齢者層のニーズ、地方での銀行窓口の代替機能——これらはデジタル化が進めば進むほど浮き彫りになる「フィジカルなタッチポイント」の重要性を示している。

 今回のファミマ・セブン銀行連合の誕生は、そうした文脈の中で「金融インフラの主導権がメガバンクから小売業・テクノロジー企業へと移行する」という長期トレンドの加速を象徴する出来事だといえる。

 問われるのは10年後の競争優位の源泉が何になるかだ。ATMの台数、アプリのユーザー数、行政との連携の深さ、通信キャリアとのエコシステム——それぞれの陣営が異なる賭けをしている今、コンビニ金融の最終形はまだ誰にも見えていない。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=川﨑一幸/金融アナリスト)