物流倉庫の屋根で発電し、オフィスへ送る…三井物産系ファンドが採用した「設備賃貸モデル」

「蓄電所の売却時期によって四半期ごとの数字は振れやすく、単年度の着地だけで評価するのは難しい。見るべきは、パイプラインが実際の引き渡しにどれだけ転換されているか、そして金利上昇局面で資金調達コストをどう吸収するかです」(エネルギー・インフラ領域に精通する証券アナリスト・堀野剛志氏)

 それでも、今回の4社スキームが示した方向性は、不動産業界にとって示唆が大きい。物流施設で発電し、都市部の施設で使うという「アセット間の電力融通」は、特定のファンドに限った発想ではない。物流施設とオフィスを併せ持つ運用会社であれば、同じ設計を応用できる。さらに、ウエストHDと東芝エネルギーシステムズは、既存発電所に蓄電池を併設する新サービスの開発なども共同で検討するとしている。屋根上の太陽光と蓄電池が組み合わされば、時間帯による再エネ供給の偏りも一定程度ならせる。

 ただ、10MWという規模は、ポートフォリオ全体の電力需要からすればまだ入り口だ。設備賃貸モデルが収益面で成り立つのか。テナントや投資家との合意形成を標準化できるのか。2028年3月の目標時点で、その答えの一端が見えてくるはずだ。FIT後の再エネビジネスで生き残るのは、補助制度ではなく、不動産や電力市場の実務に深く入り込めた事業者になる。ウエストHDの取り組みは、その見極めの試金石になりそうだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=秋田智樹/不動産ジャーナリスト)

【主な参照データ・出典】
物流施設などの遊休屋根を再エネ供給拠点に転換(JERA Cross)
ウエストニュージーランド村 系統用蓄電所の受電開始(ウエストHD)
TMEICとの系統用蓄電池事業の業務提携(ウエストHD)
ウエストHDと東芝ESSの業務提携(東芝エネルギーシステムズ)
2025年8月期 決算短信(ウエストHD)
2Q決算(株探)
「発電所」の倒産・休廃業解散動向(帝国データバンク)
全国規模で広がる出力制御(SOLAR JOURNAL)
三井物産・みずほ・e-dashの資本業務提携(三井物産)
ウエストHDとTMEIC・東芝ESSの提携(エネハブ)