物流倉庫の屋根で発電し、オフィスへ送る…三井物産系ファンドが採用した「設備賃貸モデル」

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●この記事のポイント
三井物産リアルティ・マネジメント、e-dash、ウエストHD子会社、JERA Crossの4社が2026年9月、物流施設の遊休屋根で発電した再エネをオフィスやホテルへ供給するスキームで基本合意した。所有者が設備に投資する「設備賃貸モデル」で、2028年3月までに10MW超を目指す。本稿は、FIT後に蓄電所事業へ舵を切ったウエストHDの戦略と課題も解説する。

 FIT(固定価格買取制度)を前提にした太陽光ビジネスが曲がり角に来ている。帝国データバンクの集計では、2024年度の再エネ発電事業者の倒産は8件と前年度から倍増し、休廃業・解散44件と合わせて過去最多の52件が市場から消えた。

 そうしたなか、不動産ファンド業界から一つの発表があった。三井物産リアルティ・マネジメント(MBRM)、e-dash、ウエストホールディングス(HD)の完全子会社ウエストエネルギーソリューション、JERA Crossの4社が、MBRMの運用施設の遊休屋根を使って複数施設の脱炭素化を同時に進めるスキームについて、基本合意書を締結したというものだ。

 不動産ファンドは、なぜいま「屋根」に手をつけるのか。そして施工と発電を担うのが、なぜ広島発のウエストHDなのか。

●目次

「電気が要る建物」と「屋根が余る建物」

 発表資料が課題として挙げるのは、需要と供給の「場所のズレ」だ。オフィスや大型商業施設は電力需要が大きいものの、屋根や敷地が限られ、単独で再エネ比率を上げるには限界がある。一方、広い屋根を持つ物流施設は発電ポテンシャルが大きいが、その電力を施設内で使い切るほどの需要はない。

 スキームはこのズレをポートフォリオ単位で埋める仕組みになっている。物流施設などの屋根で発電した電力をまず施設内で自家消費(オンサイトPPA)し、余った分をオフサイトフィジカルPPAでMBRMが運用するオフィス、商業施設、ホテルへ送る。PPAで足りない分は複数事業者のコンペで調達する。

 特徴的なのは投資の主体である。不動産所有者が発電設備に初期投資し、発電事業者に設備を賃貸する「設備賃貸モデル」を採用し、所有者側は遊休スペースの収益化とESG評価の向上を両立させる狙いだという。目標は2028年3月までに合計10MW以上の発電設備開発とされている。

 役割分担は明確だ。MBRMは対象物件の情報提供とテナント調整を担い、e-dashがプロジェクト全体を統括する。ウエストエネルギーソリューションは発電設備のEPC(設計・調達・建設)とO&M(保守管理)、発電事業を受け持つ。JERA Crossは小売電気事業者・アグリゲーターとして余剰電力の引き取りと需要施設への供給を担う。

「物流施設の屋根は、これまで賃料を生まない場所でした。所有者が設備を持って発電事業者に貸せば、設備賃料が純収益(NOI)に加わり、鑑定評価にも反映される余地があります。ただし、屋根防水の保証との関係、将来の屋根改修時の脱着費用、テナントとの合意形成など、契約で詰めるべき論点は少なくありません。10MWという目標は、その実務を一つずつ積み上げる規模感だとみています」(不動産ジャーナリスト・秋田智樹氏)

ウエストHDが選ばれる背景

 ウエストHDの歩みは、日本の太陽光市場の浮き沈みとほぼ重なる。同社は1981年に広島市で住宅建材商社として創業し、2005年に住宅用太陽光へ参入した。2012年のFIT施行を機にメガソーラーのEPCで急成長したが、買取価格の低下で新設市場が縮み、売上高は2014年8月期の588億円をピークに減少に転じた。