店頭金利はメガバンク以下なのに利益3倍…トマト銀行の「払う相手を絞る」預金戦略

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トマト銀行 本店(「Wikipedia」より)

●この記事のポイント
岡山の第二地銀・トマト銀行が、5年定期の金利を年0.65%に引き上げた。三菱UFJ銀行の1.00%には届かないものの、2026年4〜6月期の純利益は前年同期の2.9倍に伸びている。記事では決算データをもとに、預金利息が約7割増えても利息収入がそれを上回る収益構造、ネット支店や条件付きの高金利で資金を選んで集める戦略、そして個人預金の減少という課題を読み解く。

 岡山市に本店を置く第二地方銀行、トマト銀行が9月24日、定期預金金利の引き上げを発表した。主力のスーパー定期は5年ものが年0.50%から0.65%に、1年ものは0.46%になる。9月28日の預け入れ分からの適用で、6月の日本銀行の追加利上げを踏まえた措置だ。

 2023年11月まで、同行の5年定期は年0.002%だった。100万円を1年預けて、利息は税引前で20円。そこから約325倍になった計算だ。

 もっとも、この「0.65%」は他行を圧倒する数字ではない。三菱UFJ銀行は8月に5年ものを年1.00%へ引き上げており、1年ものも0.50%と、店頭金利ではトマト銀行を上回る。それでも同行の業績は好調で、2026年3月期の最終利益は過去最高を更新した。足元の四半期利益は前年の約3倍に達している。

 メガバンクより低い金利で、なぜ稼げるのか。決算資料と商品設計を読み解くと、規模で劣る地域銀行の現実的な戦い方が見えてくる。

●目次

預金利息は7割増、それでも利益は3倍

 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の連結決算は、経常収益が前年同期比13.3%増の73億4300万円、経常利益は2.8倍の12億7900万円、純利益は2.9倍の8億6900万円だった。中間期の経常利益予想(11億円)を、3カ月で上回ったことになる。

 中身を見ると、金利上昇の「両面」がよくわかる。費用側では、預金利息が6億1600万円から10億5900万円へと約7割増えた。預金者への支払いが一気に膨らんだわけだ。一方、収益側では貸出金利息が5億4000万円、有価証券利息配当金が4億200万円それぞれ増え、資金運用収益全体で10億1300万円の増収となった。増えた調達コスト(資金調達費用で4億5000万円)の2倍超を稼いでいる。

 ゼロ金利やマイナス金利の時代、預金は運用先に困る「お荷物」とさえ言われた。いまは違う。集めた資金を貸出や債券に回せば利ざやが取れるため、金利を払ってでも預金を確保する意味が出てきた。ただ、この構図がそのまま続くとは限らない。

「定期預金は満期が来るたびに新しい金利に置き換わるので、調達コストは利上げから1〜2年遅れてじわじわ効いてきます。資産側の利回り改善が先に出ている今の決算だけを見て、増益が続くと考えるのは早計でしょう」(金融アナリスト・川﨑一幸氏)

 同行自身も、第1四半期の上振れを受けながら通期予想(純利益20億円、前期比1.5%増)を据え置いた。有価証券関係損益や与信関係費用が変動する可能性を理由に挙げており、慎重な姿勢を崩していない。

店頭は控えめ、ネットと「条件付き」で厚く払う

 では、預金の獲得を店頭金利だけで競っているのかといえば、そうではない。同行の高い金利は、対象を絞った商品に集中している。

 代表例が、2010年に開設したインターネット専用の「ももたろう支店」だ。中国地方の銀行で初めてのネット支店で、スマートフォンでの本支店口座の開設が岡山県内居住者に限られるのに対し、こちらは国内在住なら誰でも口座を開ける。2026年4〜9月には募集総額70億円のキャンペーンを展開し、5年ものの「きびだんご定期預金」に年1.20%、1年ものの「スペシャルきびだんご定期預金」(上限500万円)に1.10%を付けた。5年ものはメガバンクの店頭金利を上回る水準だ(取り扱いは9月30日で終了)。