「同じ県内の統合は、重複店舗を整理して経費を減らす効果が読みやすい一方で、取引先の数は増えにくいのが実情です。今回のように地盤が重ならない組み合わせは、コスト削減の幅は小さいものの、顧客基盤がそのまま足し算になります。『守りの統合』と『攻めの統合』のどちらに重心を置くかは、正式発表で示される数値目標を見る必要があります」(金融アナリスト・川﨑一幸氏)
滋賀県は、県内総生産に占める製造業の比率が全国でも最上位にある内陸型の工業県だ。名神高速や国道沿いに大手の工場が並び、その周りに部品や精密加工を担う中堅・中小企業が集まる。一方、大阪と阪神間には卸売や商社、物流、ITなど、ものを売るための機能が厚く積み重なっている。
銀行は以前から取引先同士を引き合わせる「ビジネスマッチング」に力を入れてきた。ただ、その対象は自行の地盤の中に限られがちだった。滋賀の部品メーカーが大阪で新しい販路を探すとき、あるいは大阪の企業が滋賀で外注先を探すとき、同じグループ内で紹介が完結する意味は小さくない。提携発表でも、法人分野の連携項目として「企業の成長支援」「事業承継・M&A支援」「法人向けサービスの相互活用」が挙げられていた。
とりわけ効きそうなのが事業承継だ。後継者が見つからない企業の譲渡し先を探す場合、候補は多いほどよい。技術を持つ滋賀の中小メーカーと、内製化や規模拡大を狙う大阪の企業。地域をまたいだ候補探しが、地元の銀行の目の届く範囲でできるようになる。
「中小企業のM&Aでは、譲渡側の経営者が『遠くの知らない会社』に抵抗を感じることが少なくありません。長く付き合ってきた地元銀行が間に立ち、相手側も同じグループの取引先という形になれば、交渉の入り口は広がります。ただ、統合しただけで案件が自然に生まれるわけではないので、両行の担当者が情報を共有する仕組みづくりが先です」(同)
銀行が商流そのものをつくるわけではない。それでも、県境を越えた取引の「最初の紹介者」にはなれる。統合の価値を測るなら、紹介件数よりも、そこから実際に生まれた取引や承継の件数を追うべきだろう。
滋賀銀行は、環境金融で早くから知られた存在だ。1999年に環境方針を定め、2020年2月には国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)の「責任銀行原則」に署名した。取引先のESGの取り組みと融資条件を連動させるサステナビリティ・リンク・ローンなども手掛けてきた。琵琶湖を抱える県で、環境と地域経済を一体で考えてきた経緯がある。
一方、池田泉州銀行の地盤である大阪府の北部と泉州地域、阪神間にかけては、大学や研究機関、新興企業が集まる。両社は提携の段階で、法人分野に「成長領域での協働」を、サステナビリティ分野に「サステナブルファイナンスの推進」をそれぞれ掲げている。
この2つが重なるのが、脱炭素や省エネ、水処理といった分野だ。技術を持つ起業家は、初期には出資を、量産段階では設備資金の融資を必要とする。その間を同じグループがつなげれば、「研究成果はあるが量産できない」という壁を越えやすくなる。量産の受け皿として、滋賀の製造基盤も生きてくる。
「環境分野の金融は、商品の名前よりも、取引先の排出量や事業への影響を測り、改善に伴走できるかどうかで差がつきます。そのノウハウは一朝一夕には身につきません。評価の物差しをグループで揃えられれば、大阪側の取引先にも展開できるでしょう」(同)
ただし、銀行が一般事業会社に出資できる範囲には銀行法上の制約がある。規模が大きくなったからといって、リスクマネーを無制限に供給できるわけではない。外部のベンチャーキャピタルや自治体、大学とどう役割を分けるかが、実際の成否を左右する。