Z世代を甘やかすな

「うちの会社って遅れてますよね」高学歴の新卒Z世代の高プライド&無能化が進む理由

2026.05.01 公式 Z世代を甘やかすな 第10回
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「残業したくないんですよね」「それって僕の仕事ですか?」「飲み会ダルいんで行きたくないです」「そのやり方タイパ悪くないですか?」

指示は素直に聞かず、指導をすれば「それってパワハラですよね?」と口答え。世間は「価値観のアップデート」を強いてきて、Z世代への指導はどんどん弱腰になってしまう。好き勝手にふるまうZ世代部下のおかげで、職場の空気は弛緩する一方です。つけあがってさらにモンスター化するZ世代部下は、あらゆる職場に出現し、管理職を困らせています。そんな現状に、ビジネスライターの黒坂岳央さんは「Z世代を甘やかしてはならない」と警鐘を鳴らします。Z世代部下にかき回された職場を正常化するために、Z世代を甘やかさない、毅然としたコミュニケーションを身につけましょう。

東大卒を採用したのに「使えない」わけ

4月入社の新入社員の自己紹介を聞くと、東大をはじめとした名門大学の出身者ばかり。優秀な仲間が増えた、と喜んだ管理職層は、研修が終わり現場に入ってくる5月には早々に失望することになる。「この仕事、マニュアルないんですか? 非効率ですね」「海外ではこのやり方はしません。遅れてますね」などと生意気な口を叩き始める。かと思えば、ぼんやりと机に座り「指示がなかったのでなにもしていません」、偏差値は高いはずなのに想定外のことが起こればフリーズするという、指示待ちの姿勢が強い。「今年の新卒は使えない」とは、毎年発生する現象だが、近年管理職の間では「むしろ上位大学出身者ほど、正解のない場面で固まりやすい」という違和感が語られることが増えている。一体なぜだろうか。

攻略ゲーになった受験戦争

まず、彼らは決して能力が低いわけではない。むしろ非常に高い。しかしそれは「同年代の中では」という注釈がつく。18歳人口の減少に対して難関大の定員は維持、あるいは微増傾向にある。絶対的な競争倍率が低下した結果、かつてのような「圧倒的な才覚」や「野性的な突破力」がなくとも、適切なトレーニングさえ積めば、一定の知能指数を持つ層は難関大への切符を手にできるようになった。
さらに、かつてのインターネットも発達していない時代、受験生は少ない情報の中から「何が重要で、何を捨てるべきか」を自らの頭で判断し、自分なりの解法体系を構築する必要があった。この受験プロセス自体が、未知の課題に対するアプローチ訓練、すなわち「地頭」を鍛える場として機能していたのである。しかし、現在はYouTubeを開けば、あらゆる大学の過去問解説動画が無料で視聴でき、予備校のカリキュラムはAI並みに最適化され、ネット上には「合格のための最短ルート」が溢れかえっている。自分の頭で問いを解くというより、“上手に攻略本を使うゲーム”のように変化した。現代の受験生に求められるのは、誰かが用意した「最短解法パッケージ」を、いかにマニュアル通りに遂行するかという「実務能力」である。
加えて、高学歴Z世代を語る上で欠かせないのが、親による徹底的な「管理」である。典型的なエリートコースとして確立されているのが、「SAPIX(中学受験塾)で上位クラスを維持し、御三家・難関私立中学へ入学、そのまま鉄緑会へ入塾し、東大へ合格する」というルートである。これは首都圏の象徴例だが、地方でも「中高一貫+塾+推薦対策」という形で、同型の“管理型レール”が広がっている。このルートに乗ることさえできれば、カリキュラムに従って課題をこなすだけで、高い確率で東大合格が約束される。このプロセスにおいて、子供が自らの意思で「どの塾に行くか」「どのような勉強法をとるか」を選択する余地はほとんどない。すべては親によって設定され、子供はそのレールの上を脱線しないよう、細心の注意を払って「走行」することを求められる。言葉を選ばずにいえば、現代の学歴獲得はさながら課金ゲーのようである。

マザコン化する社会

このような環境で育ったことにより、彼らは「管理者」が提示したシステムに順応し、マニュアル通りに動くことにかけては極めて高い能力を有する。しかし、これは裏を返せば「システムそのものの不備を疑う」「システムがない場所で自律的に動く」という経験の欠落を意味する。ビジネスの現場において、上司が「とりあえず、いい感じにやってみて」と曖昧な指示を出した瞬間、彼らがフリーズするのはこのためだ。
一方で、名門大学を卒業したというプライドは高く、綺麗なルートを親や教師に用意してもらったため、泥臭い仕事に抵抗があり「非効率」と言って避けようとする。少しでも指示があいまいだと、「この会社の上司は使えない」といら立ちを隠さない(中には面と向かって発言する者もいる)。これは甘えというより、そういう環境に一度も晒されないまま育ったことによる“耐性不足”に近い。これで上の世代との認識のズレが起きる。高学歴Z世代は、「高学歴親のプロジェクト管理」の最高傑作である。しかし、その「完成度」の高さゆえに、管理者が不在となった瞬間、その機能不全が露呈するというパラドックスを抱えている。彼らは自らの意思で人生を選び取ってきたというよりは、親が敷いたレールの「維持管理」を委託されてきたに過ぎない。

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プロフィール

黒坂岳央
黒坂岳央

1981年大阪府生まれ。実業家。学生時代から人間関係でなめられることに苦しみ、社会に出ても理不尽な扱いを受け続けた経験を持つ。しかし、その経験を逆手に取り、なめられないための戦略を研究、体系化した。現在は、本業のかたわら、アゴラ、プレジデント、Yahoo!ニュースなどネットメディアでニュース・オピニオン記事を執筆し、PVの最高値は1記事で150万PV超。テレビ朝日系、TBSラジオなどテレビ・ラジオ番組にも多数出演している。なめられる弱者だった立場から、自らを研究対象として積み上げてきた経験を土台に本書を執筆している。

著書

なめてくるバカを黙らせる技術

黒坂岳央 /
世の中「なめてくるバカ」が多すぎて、共感、感動、絶賛の声殺到! 大人気Web連...
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