夕日(夕日凪)

夕日(夕日凪) (著者名:夕日(夕日凪))

ちまちまと色々投稿しています。書籍もちょこちょこ。一般文芸系は夕日凪、それ以外は夕日という名義です。

本日の短編(24)

あるリセマラヒロインの憂鬱。
今のシュミナちゃんとは中身が違う完全なパラレル。


『あるリセマラヒロインの憂鬱』

 私は、この世界のヒロインだ。
 頭がおかしいと思われるだろうけど、これは紛れもない真実なのだ。
 この世界は私が前世で嗜んでいた『胡蝶の恋』という乙女ゲームのものらしい。
 そして私がそのヒロインのシュミナ・パピヨンに転生したのだと知った時、戸惑いつつも喜んだ。
 ブラック企業に勤めていたOLである私を癒してくれたあのゲームのヒロインになったんだから、そりゃあ嬉しい。きっとこれは過労死した私への神様からの贈り物……ボーナスステージだ。
 そんなボーナスステージの一周目は、フィリップ王子と結ばれた。
 それは幸福感で胸がいっぱいになる、とてもいい人生だった。
 そしてその人生は優しい子供と可愛い孫達に囲まれ穏やかに終わりを迎えたはずだった。
 けれど目を開けると私は二周目のこの世界に生まれ変わっていた。
 ――すごい、ボーナスステージが続くのか。
 私は喜び勇んで今度は悪役令嬢の執事であるマクシミリアンの攻略に勤しんだ。
 ……そして彼の攻略は、上手くいった……と思っていた。
 だけどゲームでいうエンディング後の世界で、私と彼はあっさりとお別れしてしまった。
 『シュミナは悪くない』と彼は気まずそうに笑いながら言う。
 じゃあどうして、ヒロインである私が彼に振られてしまったんだろう。
 二周目の人生は政略結婚をし、そしてそれなりに幸せに生きた。
 そして三周目のボーナスステージ。
 攻略を失敗してしまった、マクシミリアンの攻略に私はまた勤しむ。
 だけど形は少し違えど彼と『別れる』という結末は同じ。
 そして四周目、五周目。結末はやっぱり変わらない。
 六周目の人生で流石に気づいた。
 ――ああ、あの人は別の人をいつも見ている、と。
 マクシミリアンはいつも、悪役令嬢を目で追っていた。
 思い返せば、どの人生でも。

 攻略できないキャラなんて、聞いてないわ。

 もうリセマラはしたくない。攻略対象に振り回されるのは十分よ。
 そう思った私は、地味だけど癒される隣の席の男の子に声をかけたのだった。
 この人生が最良であり、終わりでありますように。
登録日 2018.12.03 06:57

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2018.12.04 09:11
柊  一葉

何周もしたからこそわかる地味系モブのありがたみ……!でもヒロインポジで1周目からそこにいく可能性はゼロか〜

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