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ファンタジー 完結 長編
潮風が吹き抜ける坂の町・風鈴坂。 この町では、夏の終わりに「風送り」という不思議な風習が行われる。 人々は風鈴を吊るし、胸に残る想いや記憶を風に託して手放していくのだという。 ある年の夏、少年と少女は堤防で並んで海を見ていた。 他愛もない会話、どこにでもある日常。 それは、突然訪れた出来事を境に、かたちを変えていく。 季節が巡り、ふたたび風送りの時期がやってきたとき、 町に吹く風に、微かな違和感が混じり始める。 鈍く軋む風鈴の音、記憶にないはずの場所に吊るされた鈴。 胸の奥に残された後悔と祈りが、風に溶けていくその夜、 ふたりの心は静かに再び重なっていく。 風は何を運び、何を還すのか。 誰もが胸に抱える「忘れたくないもの」を、前に進ませる。 これは、風鈴が揺れる音に導かれて辿り着いた、 ひとつの別れと、ひとつの約束の物語。
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小説 201,855 位 / 201,855件 ファンタジー 46,706 位 / 46,706件
文字数 71,204 最終更新日 2025.06.07 登録日 2025.06.07
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