「家族」というチームのつくり方

お受験ブームで子どもが犠牲に!? 「主体性ない」「自分に自信ない」子どもが増加中?

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EQを育てる受験にするには①
「学びたい気持ちの育て方」

学びたい気持ちがないのに勉強させられることは、誰しも大きな苦痛があります。これは大人であろうと、子どもであろうと関係がありません。
子どもがいわゆる「勉強嫌い」になってしまうのは、無理やり勉強をさせてしまうからでしょう。
学びたい気持ちがない状態で勉強を無理強いさせることは、極力避けるべきです。

子どもの勉強への向かわせ方のヒントに、習い事があります。
子どもの習い事は、「楽しさを教える」ことをゴールにしているところと、「習熟させる」ことをゴールにしているところに分かれています。
たとえば水泳教室でも、水の中で泳ぐのが楽しくなることを重視しているスクールと、クロールや平泳ぎなどを泳げるようになること、さらには速く泳げるようになることを重視する専門性の高いスクールがあるのです。
この最初の入り口を間違わないことが大事です。いきなり厳しい環境の後者のスクールに入れてしまうと、子どもは泳げるようになるどころか、水泳嫌いになってしまう危険性さえあるのです。

私たちは、コスパ・タイパを求めてしまう傾向がどうしてもあります。
ですが、育成においては、まずはそのことに興味を持たせ、楽しさを知ってもらうことにエネルギーを注いだほうが、後々良い結果が出るものです。これは効率が重視されるビジネスの現場でも通用する、人を育てる効果的な方法です。

いまさせている勉強は、イヤイヤさせていませんか?
その楽しさを存分に味わっていて、もっと学びたいという気持ちを持たせられているでしょうか?
わかっていてもできていないのが、この「学びたい気持ち」を育てるアプローチなのです。

EQを育てる受験にするには②
「できる喜びの増やし方」

学びたい気持ちが強くなったら、今度は習熟する喜び、平たく言えば「できるようになった!」という喜びをいかに感じてもらえるかが重要になってきます。
逆に、「できない」「成長していない」「苦手」となると、学ぶ楽しさは減っていってしまいます。
では、どうすれば「できる喜び」を増やせるか。それは、親の褒め方が重要です。褒め方には、以下のコツがあります。

1.結果ではなくプロセスを褒める
2.他人との比較ではなく、過去との比較で褒める
3.変化に気づかせるように褒める

これらは、わかっていてもできないものです。

1.結果ではなくプロセスを褒める

私たちはつい結果を褒めてしまいます。かけっこで1位になったとか、テストがクラスで1番だったとか、結果が出たときに「すごいね!」と結果を褒めてしまいがちです。

ですが、結果が出たときは、なぜその結果が出せたのか、プロセスに目を向けるべきです。どうして結果が出せたのか、プロセスをヒアリングするのもとても有効です。
「どうしてうまくいったの?」
「何をしたから結果が出たのかな?」
「成長できたところは何だろう?」
そうやってプロセスに目を向けることで、成果の再現性を高めることができます。
逆に結果を褒めてしまうと、「結果を出せない人は存在価値がない」と考えることにもつながりかねません。

2.他人との比較ではなく、過去との比較で褒める

「〇〇ちゃんより上手だね」といったように、他人との比較で褒めるのは、よくやってしまいがちですが、子どもの自尊心を傷つけてしまいます。
他人との比較でしか自分の価値を感じられない子どもになってしまい、やがて自分に自信が持てなくなっていくのです。

そもそも子どもは、つねに人と自分を比べてしまいます。自分は〇〇ちゃんに比べてこれができないとか、そうやって比較してしまうものです。親が一緒になって他人と比較すると、自分を信じる力が育っていかないのです。
過去と比較して、前よりできるようになっていることが自覚できると、自信が育っていきます。
また、「人は人、自分は自分」と切り分けて考えられるようになると、他人の長所を、嫉妬するのではなく、称賛したり、そこから学び取ろうとする心が育ちます。

他人との比較から脱却することが若いタイミングでできると、かなりEQの高い大人になることができます。

3.変化に気づかせるように褒める

子どもは、自分で自分の変化にはなかなか気づけないものです。
ですので、定期的に振り返って、3か月前よりすごいできるようになっているね、など、変化に気づかせるような場を設けておくと、さらに自信が育つはずです。

EQを育てる受験にするには③
親のEQを磨く

こうやって改めて見てみると、子どものEQを育てるには、そもそも親のEQが大事になってくるということがわかります。
子どもの気持ちに寄り添い、無理を強いることなく、学びたい気持ちを育て、できる喜びを増やしていく。そして、結果に着目するのではなく、プロセスに目を向け、子どもが何に興味を持ち、それを楽しめているのかに心を配り、褒め方を工夫する。
こうした態度は、ビジネスの世界において優秀なリーダーが実践していることです。
これらを実践するのは、親が子どもに対して、テストの点数だけ意識するような、IQ重視の姿勢になっていたら不可能でしょう。
また、EQを育てることがIQを育てること上げることと必ずしもぶつからないどころか、IQを上げるにはEQを上げることが重要だということもわかっていただいたと思います。

自分の子どものことになると、できなくなることも多いのですが、改めて、受験への向かわせ方をEQの目線で見直すと、改善の糸口が見えるのではないでしょうか。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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