小さな子どもを持つ親の皆さん、子どもの受験をどうするか、考えていますか?
いま、とくに都内では、幼稚園・小学校のいわゆる「お受験」をする家庭が年々増えています。
議論も白熱しており、メディアなどでも「中学受験vs高校受験」というふうに取り上げられ、最終学歴を高くするには、中受に力を入れればいいのか、高受に力を入れればいいのか、親たちを悩ませています。
「大学付属高校vs受験に強い進学校」というのも、子どもに大変な大学受験をさせるのかさせないのかを決めるため、親たちを悩ませるテーマです。
ほかにも「受験に勝つための子どもの学習法」「頭がよくなる家庭になるにはどうしたらいいのか」「塾選びはどうするべきか」といった難題が次から次へと押し寄せ、親たちを悩ませています。
子どもはどんどん成長するので、決断までのリミットは待ったなしでやってきます。難しい問題だからとあと回しにすることはできないのです。
我が家でも子供が生まれてすぐのころは、受験なんて微塵も考えていませんでした。のんきに「子どもが英語が話せるようになったら一緒に海外についていっちゃおうか~」などと夫婦で話していたくらいです。
ところが、子どもが1歳になるころに妻が働かなければならなくなり、保育園を探すようになるうちに、どうやら3歳くらいから幼稚園受験があるらしいと知りました。
慶應義塾大学には慶応幼稚舎という幼稚園があり、そこに入れればそのまま大学まで行ける、みたいな情報が入ってきて、「え? 3歳で学歴が決まるの?」と衝撃を受けたことを覚えています(当時、幼稚園と勘違いしていましたが、慶応幼稚舎は小学校です)。
さらに調べてみると、「幼稚園受験に向いている子/向いていない子がいる」とか、「向いている親/向いていない親がいる」とか、「幼稚園受験と小学校受験は、親の受験なのだ」とか、知れば知るほど特殊な世界で、親が考えて決めておかなくてはならないことが多い、とわかってきました。
「受験戦争」という言葉がありますが、平和にすごしていた家庭のすぐそばで戦争が起こっていて、そこに足を踏み入れようものなら丸腰では済まされない、そういう世界が広がっていたのでした。
中学校受験を題材にした、『二月の勝者 ―絶対合格の教室―』(作・高瀬志帆/小学館)という漫画があります。
物語としても非常に面白いのですが、子を持つ親として学ぶことが多い作品でした。中学校受験のリアルが描かれており、小学生たちが自分と向き合い、成長していく姿に私は号泣してしまいました。ですので、子どもの教育に関心のある方はぜひ読んでいただきたいのですが、この漫画では、衝撃的な言葉が出てきます。
君達が合格できたのは、父親の「経済力」 そして、母親の「狂気」
物語の冒頭の入塾案内シーンで、お受験に向き合う子ども達に浴びかけられる、一番最初に出てくる言葉です。この言葉についてお話しいたします。
まずは、父親の「経済力」。
学歴とその人の生涯年収に相関があり、学歴がいい人ほど一生で稼ぐお金は多くなるというのは言うまでもない事実ですが、注目すべきは、学歴と家庭の年収にも相関がある点です。
裕福な家庭は、子どもの育成にお金をかけられ、お金をかけると学歴が高くなり、学歴が高くなるとその子の生涯年収も高くなることが、データとしても証明されているのです。
中学校受験に合格しようと思えば、塾の費用が300万ほどかかり、個別指導を使えばもっとかかります。
これにはやはり、「経済力」が必要です。
そして、塾から出される大量の宿題を管理するのは子ども1人では無理なので、親が管理をすることになります。
大量の宿題プリントを整理し、子どもの得意と苦手を把握し、得意を伸ばして苦手を克服する勉強プランをコントロールしながら、ゲームをしたがり、遊びたがり、勉強をサボりたがる子どもを机に向かわせる。
これには、母親の「狂気」が必要だというのです。
埼玉県の地方都市という平凡な環境で育った私が子どものころは、同じ小学校で中学受験をする子は1人もいませんでした。高校受験は公立の方が人気が高く、私立に行くのはスポーツが強いとか、第一志望の公立に落ちた子が仕方なく行くとか、どちらかというとマイナーなルートでした。
しかし、いまはそうではありません。大学受験は当時から「受験戦争」と呼ばれてはいましたが、いまやその戦争は、「幼稚園から始まっていますよ、親が主の戦争ですよ」と言われます。まったく違う戦場に来たと思わざるをえません。
改めて冒頭の問いを向けます。
小さな子どもを持つ親の皆さん、子どもの受験をどうするか、考えていますか? 私たち親は、子どもの受験にどう向き合うべきなのでしょうか?
少なくとも、子どもが挑む戦争に、親がまったく情報を持たず、丸腰でいることが、良いはずはありません。