「家族」というチームのつくり方

夫婦の会話がしんどくなったとき、最初に見直したいこと

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目標を持つということ

目標を持つと、「未来」について前向きに考えられるようになります。そうして行動が変わり、性格まで前向きになります。
それに関して、次のようなエピソードがあります。

私のクライアントに、とある飲食系の企業があります。すごくいい会社なのですが、幹部の一人に元アルバイトの問題児という、異色の経歴を持つ方がいます。彼のことはアルバイト時代から知っているのですが、やんちゃな男の子で、学校を中退していて、何かやりたいことはないんだけどとにかくお金は稼ぎたい、でも責任は持ちたくない、というタイプでした。
当時彼は「僕、そろそろ辞めるんで」とよくうそぶいていました。冗談であってもこういう発言をする人が本当に辞めることを知っていた私は、あるとき彼に本当はどうしたいのか尋ねてみました。
彼の同級生はまだ大学生だったりして、みんな遊んでるんですね。 だから彼も本当は仕事よりも遊んでいたいと思っていたようです。しかし「自分は高校も中退しちゃって、学歴もない。仕事への熱意もないけど、この先ろくな仕事につけないだろうし……」と、将来を悲観していました。

そこで私は彼に、社員になるどころか、店長になることを提案し、高い目標を提示しました。最初彼は「えー、店長ですか」と冗談だととらえていたものの、熱心に説得するうちに腹をくくって、店長を引き受けてくれました。
それで、彼は激変しました。目標が具体化したことで、腐らずに未来に向かって前向きに進めるようになったのです。結果として、彼は素晴らしい店長になって、あっという間に部長に昇進、いまは役員をやっています。
これは一例に過ぎませんが、腐っていた人が、目標を掲げることで輝き出したという好例で、決して珍しいことではありません。

家庭に、目標共有面談を導入する

話を家庭に戻します。
繰り返しになりますが、家族みんなが「現在」だけにとらわれていると、家庭の雰囲気はギスギスしてきます。仕事から帰ってきて、家事や雑務をこなすだけの毎日。旦那さんも奥さんも互いに「なんで一緒にいるんだっけ」となり、家族の意味を見失ってしまうのです。
しかし、目標を掲げるだけで意識が変わります。先の例に挙げたアルバイトの男の子が激変したように、「未来」が意識され、家族みんなが前向きに変化するのです。

とはいえ、家庭に目標共有面談を導入するというと、重く感じると思います。なおこれは、夫婦で話し合って目標を一致させよ、というものではありません。もっとフランクに、お互いが将来「やりたいこと(目標)」を共有するだけでいいのです。たとえば次のように。

「いつか海外に住んでみたいよね?」
「子育てが一段落したら何しよっか?」
「家を建てるとしたら、どんな間取りにしよっか」
「30万円、自由なお金が手に入ったら何しようか?」

こんな感じの、ふわっとした目標を掲げるだけで構いません。ちょっと楽しそうな問いを投げかけるのがコツです。ビジネスの1on1でもどういう問いをするかが重要ですが、その要点は家庭も同じです。
大事なのは、わくわくするような「未来」について考えさせるような問いをぶつけること。それだけで、「現在」にとらわれていた頭が弛緩し、家族みんなで「未来」が考えられるようになるのです。

また、日々の会話でも「未来」比率を高めることが重要です。我々の会話は多くの場合、「現在」「過去」で埋め尽くされています。なので、意識的に「やりたいこと(目標)」を議題にあげて、会話の「未来」比率を高めるのです。

家庭において、目標共有面談の導入方法は2つあります。
1つは、「現在」の悩み相談から「未来」の話へブリッジさせること。たとえば「現在」の問題として、子どものピアノ習いごとで悩んでいるとします。ピアノの発表会は年に1回しかなく、このペースでは1年に1曲しか覚えないスローペース。月謝も安くないし、本当にこのままでいいのだろうか。奥さんがそうした悩みを打ち明けてきたとして、「子どもにどうなってほしい?」という問いに立ち返ることで、議論の質を「未来」志向に転換することができるのです。
もう1つの方法は、年始に、去年1年の振り返りと、これからの1年のやりたいことについて話し合う、というもの。わが家では、年始に「去年のよかったことベスト5」と「今年やりたいことベスト5」を書き出して共有するようにしています。そうすることで、楽しく会話をしながら、目標について話し合うことができるようになるのです。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
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