コメ価格高騰で苦境にあえぐ焼酎業界…このままでは国産米使用はままならない状況に

2025.10.03 Wedge ONLINE

 高橋酒造も加工用米の使用実績はないためこの規定では備蓄米を購入できない。25年産加工用米を使用する計画を立てようにも生産して契約してくれる生産者がいない。「仮にいたとしてもその価格は2万円以上するため高くて使えない」と藤本氏は嘆く。

 こうしたこともあって「国は本当に備蓄米を我々に売るつもりがあるのか」と言わなくてはならないほど苦慮している。実際、7万5000トンの売却計画を建てたもののこうした要件があって申し込み数量は4万3000tに留まっている。

 「球磨焼酎業界ではGI表示を続けるため国産米の使用を続けるのか、球磨焼酎の表示を止めて外国産米の使用に踏み切るのか岐路に立たされている」と白岳酒造研究所の人吉蒸留所責任者の井樋好男氏は語る。

 高橋酒造は10月から製品販売価格を1割以上値上げすることにしているが、これでも原料米価格高騰を吸収できない。さらに25産米が値上がりすることも想定しなければならないため経営的にも厳しい判断を迫られている。

芋焼酎の製造にも打撃

 原料米高騰に苦慮しているのは米焼酎業界だけではない。焼酎業界最大手の霧島酒造は「芋焼酎」だが、麹にはコメを使用している。

国産米100%使用を謳う霧島酒造

 年間の使用原料はサツマイモが10万t、コメが2万5000tにもなる。ともに国産100%を謳っており、水も霧島裂罅水(霧島盆地の地下水)という地元の水を使っている。

 コメは地元宮崎県産の加工用米を使用しているが、使用量が大きいため不足分は全国各地から仕入れている。しかし、今年に関しては足りなくなり、備蓄米購入へ申請した。

続々と運び込まれる原料の芋

 九州本格焼酎協議会の調査によるとコメの使用量は年間5万6000tにもなり、コメの大きな需要先である。国に対して「本格焼酎が今後國酒として地位を保持し、海外展開を推し進めるためにも低廉な原料米の安定供給が必要であることから『酒造用原料米制度』を構築し、安全な原料米の供給体制を確立すること」を要請している。

 焼酎業界は、国の農業政策やそれに伴うコメ市場の混乱に振り回されている形だ。焼酎は日本の食文化として必要不可欠なものであるのに加え、農林水産物の輸出振興へ重要な役割を果たし得る。

 そうした焼酎の原料はもちろん「日本産米」であって欲しいはずだ。このままでは外国産米使用に向かいコメの生産者にとっても大きな需要先を失うことになる。産業を支える対応が求められる。