ベインキャピタル、1500億円で買収したADKHDを750億円で売却→それでも利益?LBO活用か

 買収後には事業再編やリストラなどを行い、社員が3500人ほどから2400人ほどになっているようですので、平均年収700万円とすると、単純計算で固定費が80億円近く削減されたことになります。不採算事業を切り離したのですから、利益が上がっている可能性は高いです。仮に年50億円上がったとすると、最終利益70-80億円の水準を2017年から8年続けて計約600億円の現金を生み出したと概算で試算できます。そこからLBOの借金を返します。ベインのためにADKが借金を背負わされて返すという理不尽な構図ですが、仕方ないです。私がADKの社員ならば、ばかばかしくてすぐ辞めますが……。

 それでも1050億円は返せませんね。ですが、大きな宝箱があったようです。2017年の有価証券報告書によりますと、ADKは国内外の上場株を768億円(2017年12月当時の時価)保有していました。ロンドンの大手広告代理店の株式を637億円、ほか63銘柄で130億円です。残念ながらロンドンの広告代理店の株価は下がっているようですが、2017年末の日経平均株価は2万2800円ほどで、24年末は3万9900円ですので、ほかの銘柄はADK買収後に上がった可能性が高いです。これらを適当なタイミングで売却していれば、800~1000億円くらいにはなったのではないでしょうか。

 ベインキャピタルは買収当時、LBOによる借り入れを3年程度で返済しようとしていたようにも読み取れますので、もともとこの原資を返済に充てることを想定していたのかもしれません」

 ベインは今回の株式売却で一定の利益を得た可能性があるという。

「ADKの社員が頑張って利益を出し続けるなか、ベインはLBOで調達した1050億円を有価証券の現金化と毎年の利益で予定通り返済し、もし仮に自己資金567億円で買った株を750億円で売却したのだとすれば、ベインは200億円ほど儲けた可能性があるでしょう。ADKの社員が汗水たらして稼いだお金で買い貯めていた上場株を、ベインはうまく使ったといえるかもしれません」(中沢氏)

クラフトンがADKHDを買収する目的

 では、クラフトンがADKHDを買収する目的は何なのか。また、ADKHDが買収を受け入れる目的は何なのか。

「クラフトンがADKHDを買収する目的は、あくまで推察ですが、ADKが保有するアニメのIPや企画制作力、日本のアニメ業界に広くリーチできる機会が魅力に映ったのではないでしょうか。

 一方、ADKの株を持っているのはベインなので、今回の買収についてはADK側が受け入れる意思を持つのかどうかは関係ありません。中小企業のM&Aであれば買収後にキーマンが全員辞めたりすれば大変なので、買い手も売り手も慎重になって確認しながら動きますが、ここまでの大企業になると組織で動いていますので『ADKの従業員から反発されたらどうしよう』といったことは考慮されません。広告代理店という事業は人が全てなので、海外企業が買収してPMIをきちんとやっていくのは相当大変だと思います。もっとも、それは買い手側の課題であって、ベインがADK株を売却を判断する上では関係ありません」(中沢氏)

ADKHDにも海外ビジネス拡大のメリット

 ADKHDの主な事業は広告・マーケティング事業だが、アニメ・コンテンツ事業にも強みを持つ。『ドラえもん」『クレヨンしんちゃん」『プリキュア」『遊戯王』シリーズなど数多くのアニメ制作委員会に参加しており、アニメの制作・マーケティングのノウハウを持つ。また、多くのIPを活用する権利を持つとみられる。クラフトンがADKHDを買収する目的は何か。