こうした声から見えてくるのは、「LINE AIは特別なスキルがなくてもすぐに使える」点が評価されていることだ。
ITジャーナリストの小平貴裕氏は、他の生成AIとの違いと住み分けについて、以下のように分析する。
ChatGPT:知識量が豊富で調査や専門分析に強い。ただし日本語はやや定型的。
Claude:長文処理に優れるが、日本語最適化は途上。
LINE AI:知識の深掘りには弱いが、日本語のニュアンス理解とLINEという生活インフラへの統合が大きな差別化要因。
「つまり、『高度な情報探索』にはChatGPT、『長文処理』にはClaude、『日常業務やコミュニケーション補助』にはLINE AIという役割分担が見えてきます。現状ではこのような住み分けといえますが、今後の進展次第で、大きく勢力図は変わってくるでしょう」
加えて、 LINEならではの強みとして次のように指摘。
圧倒的なユーザー基盤:国内9,600万人以上が利用。新しいアプリを導入する必要がない。
生活導線に統合:チャット画面からシームレスに利用できるため、「調べる」や「まとめる」が日常の流れに自然に入り込む。
心理的ハードルの低さ:普段から使い慣れているLINEだからこそ、情報を入力する抵抗感が少ない。
「特にリソースの限られた中小企業や個人事業主にとっては、導入コストが事実上ゼロである点が大きな魅力です。大企業では、すでに導入されているマイクロソフト系のAIや、Google系のソフトを活用する傾向がありますが、LINEであれば中小企業にとっても参入障壁が低く、一気に普及する可能性はあります」
一方で、LINEはこれまで「個人情報管理」について何度も議論を呼んできた。だからこそ、AI利用においてはデータの扱いがどうなるかが注目される。ビジネス用途で本格的に普及するには、プライバシー保護の透明性をどこまで担保できるかが鍵になるだろう。
LINE AIはChatGPTの完全な代替ではない。しかし「誰でも今すぐ、生活や仕事の延長で自然に使えるAI」としての存在感は確かだ。海外勢が「高度な分析ツール」として進化する一方、LINE AIは「最も身近なアシスタント」としての立ち位置を築けるかもしれない。
AIが生活とビジネスに溶け込む未来。その扉を開くのは、意外にも日本発のLINE AIなのかもしれない。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)