覇権20年、GitHubは本当に“曲がり角”なのか…AI時代の開発基盤に変化

 ただし、競合(Cody、Replit AI、Amazon Q Developer)も急伸しており、Copilotだけで優位を保つのは難しい。

●柱(2):大規模刷新の噂

 業界メディアでは、以下の刷新が進められていると報じられている。

 ・CI/CDの再構築
 ・UI/UXの抜本改革
 ・AIエージェントによるリポジトリ管理自動化
 ・企業向けセキュリティ強化
 ただしコミュニティでは慎重な声が多い。

「GitHubは変えすぎるとユーザーが離れるし、変えないと時代に取り残される」(海外エンジニアのコメント)

 まさに“ジレンマ”の局面にある。

競合サービスの拡大が示す“開発の分散化”

Vercel:AI時代の“アプリ構築~ホスティング”を独占

 特に急伸しているのが、Next.jsを運営するVercelだ。AI生成したコードを素早くアプリとして動かすワークフローが圧倒的に速く、GitHubよりも“実装~デプロイ”に最適化されている。

Replit:モバイル時代の“新GitHub”

 若い開発者にとって、Replitは「GitHubより簡単」な選択肢になりつつある。ブラウザでAIにコードを作らせ、そのまま実行・共有できるため、リポジトリ管理そのものが不要になる。

Sourcegraph:巨大コードの理解をAIが担う時代へ

 巨大企業に普及する“コードベース検索×AI”のサービス。GitHubの検索より高速で精度が高い。

 生成AIの研究も行うITジャーナリスト・小平貴裕氏は次のように語る。

「GitHubは衰退するというより、“役割が変わる”。AIがコードを生成する時代において、GitHubは“コードの保管庫”から“AIが学習・参照するデータセンター”の役割へ移行する可能性が高い」

 ソフトウェアアーキテクトの宅間剛氏は、こう見通す。

「若い開発者がGitHubに依存しなくなるのは自然。ただし大企業のガバナンスはGitHub Enterpriseに依存しており、数年で置き換えは不可能。OSSコミュニティもGitHubに深く根付いている」

 戦略コンサルタントの高野輝氏は、GitHubが水際まで追い詰められているとの認識を示唆する。

「VercelやReplitは“GitHubより便利”なだけでなく、AI時代の開発に最適化されている。GitHubが本気で改革しなければ、スタートアップ領域では存在感を失う」

“凋落”ではなく「中心性の低下」

 GitHubは凋落しているわけではない。収益もユーザー数も安定し、企業需要も強い。だが、かつてのように“開発者の中心”でい続けられるかは別問題だ。

●GitHubが失うもの
 ・若い開発者の“最初の選択肢”という位置付け
 ・フロントエンド中心の開発フロー
 ・AI生成コードとの親和性の低さ

●GitHubが依然として強い領域
 ・大企業のセキュアなソフトウェア管理
 ・OSSコミュニティとの深い結びつき
 ・マイクロソフトによる長期投資
 AIとクラウドが主役になる世界で、開発基盤は一極集中から“分散化”へ向かうだろう。

 その中でGitHubがどの位置を取るかは、今後2~3年の刷新内容によって大きく左右される。

●GitHub離れは“部分的には”進んでいる。
特にAI開発・スタートアップ領域では、VercelやReplitのような特化型ツールのほうが便利なケースが増えている。

●ただし凋落ではなく“役割が変わる”段階。
大企業やOSSでは依然として不可欠な存在。

●AI時代の開発方式そのものが変化しており、GitHubの中心性が弱まっている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)