2025年後半に発表された最新のGeminiシリーズは、主要ベンチマークでGPT-4oを上回るスコアを複数記録した。
例:
・MMLUスコア:Gemini 1.5 Flash→81.7、GPT-4o→約81
・長文推論:Geminiのほうが安定性が高いとの検証が複数コミュニティから報告
特に注目されたのは、グーグルが動画生成Soraに対抗して発表した「グーグルの新モデル『Gemini 2.5 Flash Image』(通称:NanoBanana)」、さらにブラウザAtlasに対抗する「AIブラウザモード」。これらの製品がユーザーの間で高評価を受け、“グーグルの逆襲”が一気に可視化した。
AI研究者の武村恭平氏はこう指摘する。
「OpenAIは製品リリーススピードでは勝っていますが、グーグルはモデル性能・GPU自社保有・データセンターの規模という“総合力”で巻き返している。2025年後半からユーザーの評価も相対的に揺れ始めています」
OpenAIが“非常事態”と捉えるのも無理はない。
OpenAIの財務状況は、外から想像されるほど盤石ではない。
■売上は急増、だが依然として巨額赤字
The Information(2025年9月報道)によれば、OpenAIの年間売上は100億ドル規模に達する見通しとされる。前年比約2倍という驚異的な成長だ。
しかし同時に、
・年間数十億ドル規模の赤字
・GPU調達・データセンター投資の急増
・2026年以降も巨額のキャッシュフロー赤字が続く見込み
と報じられている。
生成AIはユーザーが増えるほど推論コストも急増する特殊な事業だ。ChatGPTのような対話型AIでは、1ユーザーあたりの推論コストが数円~数十円のオーダーで発生し、膨大な利用者を抱えると収益構造が逆転する。
投資アナリストの金山亮氏はこう語る。
「OpenAIのビジネスは“規模の経済”が働きにくい珍しいモデルです。一般的なSaaSと違い、ユーザーが増えるほど原価が増え続けるため、広告など安定収益がなければ財務が不安定になります」
資金調達に依存する構造が続けば、利用者減少が“資金難”に直結するリスクもある。
一方、グーグルはAI競争を戦う前提からしてOpenAIとは桁違いだ。
■広告事業の利益:年間3~4兆円規模
Alphabetの決算(2025年Q3)では、グーグル広告の年間売上規模は約2400億ドル(約36兆円)。営業利益率は約25%で、毎年数兆円単位の利益が生まれる。これはOpenAIの売上全体を大きく上回る。
■自社GPU(TPU)と巨大データセンター
グーグルは自社開発のTPUを使い、推論コストを抑制できるうえ、世界最大級のデータセンター群を保有。OpenAIとは、資金・設備・計算資源の三つで雲泥の差がある。
「AI競争は“頭の良さ”だけでなく、“どれだけ計算資源を持っているか”が勝敗を分けます。グーグルは広告の莫大な利益をAIに再投資でき、OpenAIは持久戦では不利です」(白井氏)
資金力の差が、モデル開発スピードにも直結していく。
OpenAIが広告を導入する場合、狙いは次の2つだ。
(1)安定収益の確保
推論コスト負担を軽減するため、広告は魅力的な収益源となる。
(2)グーグルの本丸「検索広告」に攻め込む布石
もしChatGPTが広告検索モデルを搭載すれば、グーグルの広告帝国に直接切り込みが可能になる。