このモデルは成長局面では極めて強力だが、金利上昇や利用単価の下落には脆弱だ。営業キャッシュフローが改善しても、その多くは利払いと巨額の減価償却費に吸い取られていく。
2025年12月には22.5億ドルの転換社債(CB)を発行。株主価値の希薄化を承知のうえで、現金を確保しなければ設備投資が止まる状況に追い込まれている。
金融アナリスト・川?一幸氏は次のように指摘する。
「コアウィーブはSaaS企業ではない。実態は、極端に資本集約的な“GPUリース会社”だ。評価軸は成長率ではなく、負債耐久力になる」
コアウィーブの問題が深刻なのは、単なる一企業の財務リスクにとどまらない点だ。最大のカギを握るのが、NVIDIAとの一蓮托生の関係である。
コアウィーブはNVIDIA製GPUの最大級の顧客の一角であり、その設備投資はNVIDIAのデータセンター向け売上を直接的に押し上げてきた。言い換えれば、コアウィーブの設備投資ペースは、NVIDIA決算の“裏のエンジン”でもある。
もしAIブームが沈静化し、GPUのクラウド利用単価が下落すればどうなるか。まずコアウィーブのキャッシュフローが悪化し、新規GPU購入が止まる。次に、NVIDIAの高成長を支えてきた「クラウド事業者向け需要」が急減速する。
さらに深刻なのは、GPUの中古市場だ。担保となっているGPU価格が下落すれば、金融機関は追加担保を要求する可能性がある。いわばマージンコール的な事態が発生すれば、コアウィーブは一気に資金繰り危機に陥る。
その影響は、NVIDIAの決算に“ラグを伴って”波及する。売上の減速だけでなく、「需要は実需ではなく金融レバレッジに支えられていたのではないか」という疑念が、市場に広がる可能性がある。
コアウィーブが崩れれば、影響は連鎖的に広がる。金融機関(Blackstoneなど)、GPUメーカー、クラウド利用企業、そしてAIスタートアップまで、資金循環のどこかで詰まりが生じる。
OpenAIやメタにとっても、これは対岸の火事ではない。コアウィーブに依存した演算計画が崩れれば、AI開発ロードマップは数年単位で修正を迫られる。
AI市場は今、「技術バブル」ではなく、「資本構造バブル」という新たな局面に入りつつある。
コアウィーブは、AI産業の急成長を支える「心臓」であると同時に、資金の流れが止まれば全体を壊死させかねない「血栓」でもある。株価低迷の裏で続く巨額契約は、テック巨人たちの焦りを映し出す鏡だ。
コアウィーブの行方は、一企業の成長物語ではない。それは、生成AIブームが実需に裏打ちされた成長なのか、それとも金融レバレッジに依存した幻想なのかを見極める、試金石となる。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)