転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

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文明進化(?)編

女神「タイムレコーダー(タイムカード式)送ったわ〜」→ギルド長「【寿命を刻み魂を管理する閻魔の祭壇】だ……!」

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「あー、待ち合わせに遅れるとか、人として終わってるわ~」

わたしは天界のモニターを見ながら、イライラして貧乏ゆすりをしていた。 先日の「コピー機」で自分の変顔を量産しちゃった修道士たちはどうでもいいとして。 今、気になってるのは下界のルーズさよ。

「『日の出と共に集合』とか、アバウトすぎない?」 「だから遅刻するし、ダラダラ残業するハメになるんだって」

時は金なり。Time is Money。 文明的な生活を送るなら、1分1秒単位で時間を管理しなきゃ! あいつらには「勤怠管理」という概念を叩き込む必要があるわね。

そこでこれ!

【電子式タイムレコーダー(6欄印字・赤黒2色印字機能・メロディ付き)】

カードをガシャンって入れるだけで、出勤時間を正確に印字してくれる管理職の味方。 遅刻すると赤いインクで印字される、無言のプレッシャー機能付き。

「これで毎日ガシャンってやれば、生活リズムも整うっしょ!」 「定時退社でワークライフバランス、実現してね~!」

レッツ・定時ダッシュ! 転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

──冒険者ギルド・総本部「依頼受注ホール」──

「おい、また新人たちが来てねぇぞ! たるんでんのか!」

ギルドマスターのバルガスが怒鳴り散らす。 冒険者たちは自由人だ。時間は守らない、約束は忘れる、二日酔いで休む。 組織としての統率は崩壊寸前だった。

「まったく……。これでは魔王軍と戦う前に、組織が瓦解するわ」

その時である。 ホールの入り口、掲示板の横に、音もなく『灰色の箱』が設置された。

「あ? なんだありゃ」

箱の上部には、細いスリット。 横には、大量の『長細い紙片(タイムカード)』が差し込まれたラック。 そして、箱の中央には、赤く光る数字が『08:00』と点滅している。

「数字が……動いている。これは時計か?」

バルガスが近づき、ラックから一枚の紙片を手に取った。 紙には何も書かれていない。ただ、等間隔に枠があるだけだ。

「……誘っているのか? 『この紙を我に捧げよ』と」

バルガスは恐る恐る、紙片をスリットに差し込んだ。

シュッ。

「! 吸い込まれた!」

ジジッ……ガチャン!!

不気味な咀嚼音と共に、紙片が吐き出された。 そこには、鮮明な黒文字で『08:01』と刻印されている。

「……刻まれた」

バルガスは震えた。 これはただの記録ではない。 この機械に紙を通した瞬間、自分の魂の一部が切り取られ、この箱の中に「登録」された感覚がしたのだ。

「なるほど……。これは**『閻魔の帳簿(えんまのちょうぼ)』**か」

「ギルマス、どういうことっすか?」

「わからんか! この刻印は、俺が『今日、この時間に生きている』という証拠を神に提出する儀式なのだ!」

その時、二日酔いの新人が遅れて入ってきた。 「うぃ~す……あ、なんか新しい機械っすか?」

新人は適当にカードを取り、機械に突っ込んだ。

シュッ。ジジッ……ガチャン!!

吐き出されたカードを見て、新人の顔色が青ざめた。

「あ、赤い……!? 文字が、血のように赤いぞ!!」

バルガスが叫ぶ。 「貴様! 神はお見通しだ! 貴様の怠惰な魂には『赤き死の宣告』が下されたのだ!」

「ひぃぃぃ! 死ぬんですか!? 俺、死ぬんですか!?」

「助かりたくば働くのだ! この刻印が黒くなるまで、死に物狂いで依頼をこなせ!」

ギルド内に戦慄が走る。 この箱は、冒険者たちの行動を監視し、怠けた者には赤い烙印を押す「処刑宣告マシン」だ。

「並べ! 全員並べ! 朝の『生存報告』を行う!」

「うおおお! 俺はまだ生きたい!」 「頼む! 黒であってくれ!」

ガチャン! ガチャン! ガチャン!

冒険者たちが列をなし、祈るようにカードを通していく。 黒なら歓喜し、赤なら絶望して地面に崩れ落ちる。

「よし、全員登録したな! これより、貴様らの命はこの箱が握っていると思え!」 「一秒たりとも無駄にするな! 止まれば死ぬぞ!」

かつてない緊張感。 全員が狂ったように依頼書をむしり取り、戦場へと駆けていく。

そして夕方。 定刻の17時。 機械から、軽快なメロディが流れた。

『キーンコーンカーンコーン♪(ウェストミンスターの鐘)』

「!? なんだこの音は!?」 「鐘だ! 弔いの鐘が鳴っている!」

「終わりだ……。今日の『生の猶予』が終わったのだ……」

バルガスが沈痛な面持ちで告げる。 「戻れ! 全員帰還して、再びカードを通すのだ! 『今日も生き延びました』と神に報告せねば、寝ている間に心臓を止められるぞ!」

「急げぇぇぇ! 鐘が鳴り止む前にぃぃぃ!」

傷だらけの冒険者たちが、血相を変えてギルドに滑り込む。 ガチャン! ガチャン! 退勤の打刻は、彼らにとって「生存証明」そのものだった。

「よかった……今日も生き延びた……」 「明日も……明日もこの箱に認められるよう、働かねば……」

冒険者ギルドは、恐怖と管理によって支配された、世界で最も規律正しい(そしてブラックな)軍隊へと変貌していた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「……えぇー」

私はモニターの前で、アイスコーヒーを吹き出しそうになった。

「なんで社畜になってんの?」

冒険者って、もっと自由な職業じゃん? なんでタイムカード通すたびに「命拾いした……」みたいな顔してんの?

「『赤き死の宣告』って、ただの遅刻マークだから!」 「給料引かれるだけだから! 命までは取らないから!」

でもまあ、遅刻はなくなったし? 依頼の達成率も爆上がりしてるし? 結果として、ギルドの売上すごいことになってるけど。

「意図としては、スマートな働き方改革をして欲しかったのに……」 「なんか、死と隣り合わせの強制労働施設になっちゃった?」

チャイムの音にビビりすぎて、17時になった瞬間全員ダッシュで帰ってくるの、ちょっと面白いけど。 ま、規則正しい生活は健康の第一歩だし! 過労死しない程度に頑張ってね~!

女神「わたしもそろそろ定時なんで、あがりまーす! お疲れっしたー!」
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