転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

文字の大きさ
31 / 63
文明進化(?)編

女神「回転式日付印(赤インク内蔵)送ったわ〜」→宰相「【血の盟約を刻みし時空の支配具】を手に入れた……!」

しおりを挟む
「あー、ハンコ押すのめんどくさ。電子契約にしろよな~」

わたしは天界のデスクで、宅配便の受け取り伝票に印鑑を押し続けていた。 先日の「タイムレコーダー」で冒険者たちを社畜化させちゃった件、天界の労基署から大量の書類が届いてるんだよね。

「でもさ、この『ガチャン!』って押す感触、嫌いじゃないのよね」 「承認欲求が満たされるっていうか? 自分が偉くなった気がするじゃん?」

下界の役人たちも、毎日手書きのサインとか蝋封(ろうふう)とかやってて、効率悪すぎ。 もっとポンポン押して、スピーディに決裁を下すべきだと思うわけ。 意思決定の速さは、国の強さだからね!

そこでこれ!

【業務用・回転式日付印(インク内蔵型・テキスト「承認」)】

グリップを握って押し込むと、中で印面が回転してインクが付き、紙に押し付けられるハイテクスタンプ。 「ガチャン!」という重厚な音と、真ん中の日付、そして周りの「承認」という赤文字が威厳たっぷり。

「これで書類を次々と承認していけば、王国の政治も爆速化するっしょ!」 「スタンプラリー感覚で、国を動かしちゃって~!」

レッツ・承認! 転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

──王都・宰相執務室「決裁の間」──

「宰相閣下、まだ決裁は降りないのですか! 民が飢えています!」 「閣下! 隣国への親書に署名を!」

宰相ヴァルガスは、山積みの羊皮紙に埋もれて呻いていた。 王が病に伏せって以来、すべての政務が彼にのしかかっている。 だが、一枚一枚内容を確認し、羽ペンで署名し、溶かした蝋(ロウ)を垂らして封をする……。 この作業があまりにも遅い。

「無理だ……。手が動かん。このままでは国が滞る……」

その時である。 書類の山の頂点に、音もなく『黒き鉄の塔』のような器具が出現した。

「なんだ? 文鎮か?」

ヴァルガスはそれを手に取った。 ずしりと重い。 握りやすいグリップ。そして底面には、複雑な魔方陣(反転した文字)が刻まれている。

「……押せ、ということか?」

ヴァルガスは、試しに手元の「下水道工事の認可書」の上に、その器具を置いた。 そして、グリップを力強く押し込んだ。

ガチャンッ!!

機械的な、しかし心地よい金属音が響く。 器具を離すと、そこには鮮烈な**『赤き紋章』**が刻まれていた。

「!!」

中央には『202X.12.12』という謎の数字。 そしてそれを囲む円には、『承』『認』という、力強い異国のルーン文字。

「赤い……。まるで鮮血のような赤だ」

ヴァルガスは戦慄した。 インクの乾きは早い。滲みもない。 蝋封のように割れることもない。 これは、永遠に消えぬ**『血の盟約(ブラッド・パクト)』**ではないか?

「……読めるぞ。このルーンは『絶対許可』を意味している」 「そして中央の数字は……『時』を刻んでいるのか?」

部下が駆け寄る。 「閣下! その紋章は!」

「見たか。私が一瞬で『意思』を刻み込んだのを」 「これはただの署名ではない。対象を強制的に肯定し、時空を超えてその存在を確定させる**『王権の刻印』**だ!」

「おおお! なんと神々しい!」

ヴァルガスは震える手で、次の書類──「増税の布告」にスタンプを押した。

ガチャンッ!

「速い! 一瞬だ!」 「署名なら3分かかる作業が、わずか1秒で終わった!」

「これだ……! これさえあれば、私は神の速度で国を支配できる!」

ヴァルガスの目に、怪しい光が宿る。 彼は狂ったように、書類の山に向かってスタンプを連打し始めた。

ガチャン! ガチャン! ガチャン! ガチャン!

「許可! 許可! これも許可だ!」 「見ろ! 赤き紋章が次々と生まれていく! 私の意思が世界を埋め尽くしていくぞ!」

「閣下! 素晴らしい速度です! 一月分の仕事が数分で!」

しかし、勢い余ってヴァルガスは、部下の額にスタンプを押してしまった。

ガチャンッ!

「あ」

部下の額に、鮮やかな赤丸と日付が刻まれる。

「……おお……」

部下は恍惚の表情を浮かべた。

「力が……湧いてきます」 「私は今、閣下に……いや、神に『承認』されたのですね?」

「そ、そうだ! 貴様は選ばれし者だ!」

ヴァルガスは気づいてしまった。 この刻印は、紙だけではなく、人心をも支配するのだと。

「並べ! 家臣どもよ、全員並べ!」 「この『血の刻印』を受けた者のみが、真の忠臣となるのだ!」

「押してください! 私の額に!」 「私には胸に! 心臓に『絶対許可』を!」

執務室は、額や頬、手の甲に「承認印」を押された男たちで溢れかえった。 彼らは互いの刻印を見せ合い、優越感に浸る。

「見ろ、俺の日付は未来を指している(※日付設定を間違えただけ)」 「貴様は未来人か! なんと高貴な!」

「閣下、この『日付ダイヤル』を回せば、過去の書類も改竄できます!」 「過去すらも支配するのか! これぞ時空の支配具!」

宰相ヴァルガスは、全身に「承認」の印を押された部下たちを従え、自らの額にも押印した。

「我は肯定された! この世の全てを承認する!」 「ガチャン! ガチャン! 世界よ、我に従えぇぇぇ!」

王国の中枢は、顔中真っ赤なスタンプだらけの集団が、機械的な音と共に全てを肯定し続ける、異様なカルト教団と化していた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「……うわぁ」

わたしは宅配便の段ボールを開けながら、ドン引きしていた。

「顔に押すなよ」

油性インクだよ? 落ちないよ? お風呂入っても、一週間くらい額に「承認」って残るよ?

「『時空の支配』って何?」 「ただの日付変更ダイヤルだから! 明日になれば手動で回すやつだから!」

しかも「未来の日付」にしちゃってる人いるけど。 それ、ただの事務ミスだから。 未来人じゃないから。

「意図としては、事務処理を早くして欲しかったのに……」 「なんか、全身にスタンプ押した『承認済み人間』が増殖してるんだけど……」

あれ、街中で流行ったらどうしよ。 「俺、承認済みだから」みたいなマウント合戦始まったら、治安悪化待ったなしじゃん。 消しゴム……いや、クレンジングオイル送ってあげた方がいい?

女神「ま、みんな自分に自信が持てたなら、それはそれで幸せ……なのか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月中旬出棺です!! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...