転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

文字の大きさ
42 / 63
文明進化(?)編

女神「2穴パンチ(強力タイプ)送ったわ〜」 →異端審問官「【罪人の魂を物理的に摘出する断罪の顎】だ……!」

しおりを挟む
「……うぅ」

わたしは天界のデスクに突っ伏して、指で机をカリカリしていた。 前回のトランシーバー、みんな「悪魔の囁き」とか言って投げ捨てちゃったし。 便利だと思ったのに。仲良くなれると思ったのに。

「わたし、センスないのかな……。もう引退したほうがいい?」 
「異世界の人たちにとって、わたしの親切は迷惑なのかな……?」

(──ねぇ、誰か「助かった」って言ってよ。わたし、褒められて伸びるタイプなのに……)

でもさ。 よく見たら、あいつら書類の管理が雑すぎるのよ。 机の上に紙が散乱してて、どれが誰の罪状か分かってないし。 あれじゃ冤罪も起きるって。

書類はね、穴を開けて、紐を通して、ガッチリ束ねるのが基本なの! 散らばるなら、物理的に繋げばいいじゃない!

そこでこれ!

【業務用・強力2穴パンチ(165枚対応・ハンドルロック機能付き)】

分厚い書類も一撃で貫通する、巨大な黒い鉄の塊。 レバーを押し込むと「ガシャン!」という重厚な音と共に、完璧な真円の穴を二つ空ける事務職の相棒。

「やばっ! これ見て! この『ガシャン!』って感触、快感すぎ!」 
「これなら分厚い罪状も一発で貫通! キレイにファイリングできるっしょ!」

「ほら見た~? 今のわたし、復活! ガチで有能神なんだけど!」

(──よしよし、これで整理整頓の神として崇められるはず! 見ててね上司!)

必殺の穴あけパンチ、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

──帝国・異端審問局「判決の間」──

「……被告人の書類はどこだ! 多すぎて見つからん!」

異端審問官長ヴァルガスが怒号を飛ばす。 机の上には、数千人分の罪状を記した羊皮紙が雪崩のように積まれていた。 風が吹けば飛び、コーヒーをこぼせば汚れる。 管理体制は崩壊寸前だった。

「ええい、これでは誰を処刑すべきかも分からん! 神よ、我をお導きください!」

その時、書類の山の上に、ズドンッ!と『黒き鉄の断頭台』のような器具が落下した。

「む? なんだこれは」

漆黒のボディ。長く伸びた重厚なレバー。 そして、底面には鋭利な「二本の牙(刃)」が隠されている。

「……処刑器具か? 指を詰めるための?」

ヴァルガスは直感した。 神は「迷うなら、物理的に裁け」と言っているのだ。 彼は試しに、手元にあった凶悪犯の調書を束ね、その器具の「口」に差し込んだ。

「見よ! この『顎(あぎと)』に罪状を食わせろということか!」

ヴァルガスは全身全霊を込め、黒いレバーを押し込んだ。

ガシャンッ!!

凄まじい金属音が響く。 分厚い羊皮紙の束が、一瞬で貫かれた。

「!! 空いた!」 「見ろ! 完璧な『虚無の円』が二つ、穿(うが)たれたぞ!」

部下たちがざわめく。 「長官! 文字が消えています!」 「穴の空いた部分に書かれていた『反逆』の文字が、物理的に消滅しました!」

「なるほど……。これは『罪の切除』か」 「この機械を通すことで、罪そのものを世界からえぐり取り、浄化する儀式なのだ!」

「おおお! 素晴らしい! これで書類を処理すれば、彼らは赦されるのか!」

だが、勘違いはここで終わらなかった。 ヴァルガスがパンチを持ち上げ、裏蓋(クズ受け)をパカッと開けた瞬間である。

パラパラパラ……。

中から、切り取られた無数の「小さな丸い紙片」がこぼれ落ちた。

「……あ」

ヴァルガスは凍りついた。 床に散らばった、無数の白い円。 そこには、先ほど「切除」されたはずの文字の断片が残っている。

「……ひぃっ!?」

部下が悲鳴を上げた。

「ちょ、長官! これ……『魂』です!!」 「えぐり取られた罪人たちの魂が、錠剤のように圧縮されて出てきました!」

「な、なんだと!?」

「見ろ! この紙片に『命』という文字の一部が!」 「こっちは『心』だ! 彼らの存在核(コア)が、物理的に摘出されている!」

ヴァルガスは震える手で、小さな丸い紙片を拾い上げた。 軽い。あまりにも軽い。 一人の人間の重みが、この数ミリの紙くずに変えられたのだ。

「なんという冒涜的兵器……! 『浄化』などではない!」 「これは対象の魂を物理的にくり抜き、物質として保存する『魂魄(こんぱく)の収穫機』だ!」

その時、開けっ放しの窓から強風が吹き込んだ。

ヒュオオオオオッ!

「あ」

床に散らばった数百個の「魂(パンチ屑)」が、風に舞い上がった。

「わぁぁぁぁぁ!! 魂が! 罪人の魂が逃げるぞぉぉぉ!!」

「捕まえろ! あれが空に還れば、怨霊となって国を滅ぼす!」 「待て! そっちはA級戦犯の魂だ! 吸い込むな! 鼻に入る!」

判決の間は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。 宙を舞う無数の白い紙吹雪。 それを必死に手で追いかけ、網で掬い、時には口に入ってしまい「おぇぇぇ! 魂を食ってしまったぁぁ!」と嘔吐する審問官たち。

「長官! 数が合いません! 3つ足りません!」 「探せ! 机の下だ! この『魂の欠片』を一つでも逃せば、我々の首が飛ぶぞ!」

「こっちにもあった! ……いや、これはただの埃か!? 区別がつかん!」 「ええい、埃ごと瓶に詰めろ! 封印するのだ!」

厳粛な審問局は、床に這いつくばって数ミリの紙クズを血眼で探し続ける、狂気の清掃員集団へと成り果てていた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「……はぁ?」

わたしはモニターの前で、ラムネをボリボリ噛み砕いていた。

「なんでゴミ拾ってんの?」

穴開けたカスだよ? 捨てるやつだよ? なんで瓶詰めにして厳重に保管してんの?

「『魂の収穫機』って……ただのパンチ屑だから!」 「風で飛んだくらいで世界の終わりみたいに叫ばないでよ……」

(──ねぇ、せっかく整理整頓できると思ったのに……) (──なんであいつら、ゴミの方を大事にするわけ? バカなの?)

でもまあ、書類自体は穴が開いて紐で束ねられたみたいだし? 目的は達成された……のかな? 瓶詰めされたパンチ屑、なんか「聖なる遺灰」として高値で取引されそうだけど。

「ま、いっか! リサイクル精神ってことで!」 「ゴミまで愛するとか、人間も捨てたもんじゃないね~!」

「いや、掃除機かけたほうが早くない!?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月中旬出棺です!! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...