転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

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文明進化(?)編

女神「ペーパーカッター(押し切り式)送ったわ〜」 →処刑執行人「【因果を断ち切る断頭台の祭壇】が設置された……!」

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「……もう、疲れたよパトラッシュ……」

わたしは天界のデスクで、突っ伏したまま動かなくなっていた。 前回の4色ボールペン。 あんなに便利なのに、なんで「色の戒律」とか作って自滅するわけ? ペンの色で戦争の危機とか、意味わかんないんだけど。

「人間って、選択肢があるから迷うのよ」 
「多機能とか、応用とか、あいつらには早すぎたんだわ……」

(──ねぇ、わたし高望みしすぎた? もっとバカでも使えるやつじゃなきゃダメ?)

でもさ。 あいつら、まだ書類をハサミとかナイフで切ってるのよ。 ガタガタだし、斜めになってるし。 A4サイズに統一したいのに、みんなバラバラのサイズでファイリングも汚いし。

「切る。ただ真っ直ぐに、紙を切る」 
「これ以外の用途なんて存在しない、究極の単機能アイテムなら、絶対に誤解しようがないっしょ!」

そこでこれ!

【業務用・ペーパーカッター(押し切り式・A4対応・安全ガード付き)】

学校やオフィスにある、巨大な刃がついた台。 紙をセットして、棒状のハンドルを「ガシャン!」と下ろすだけで、スパッと直線に切れるアレ。 通称「裁断機」。

「これなら『紙を切る』以外に使いようがないじゃん!」 
「ハサミみたいに指を入れる穴もないし、ただ下ろすだけ!」
 「これなら! これなら絶対にいけるはず!」

(──頼むよマジで……! これでダメならわたし、もうどうしていいか分かんない……!)

背水の陣、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


──王城地下・特別公文書処理室──

「……この書類の端が揃わん。ナイフでは限界がある」

公文書管理官であり、元・王宮処刑人であるガイルは、不揃いな羊皮紙の束を見て舌打ちした。 彼は几帳面だった。 不揃いな紙を見るだけで、かつて罪人の首を落とした時のような衝動に駆られるのだ。

「ええい、美しくない! 全て規格通りに整えたい!」

その時、作業台の上に、ズシンと重い『鉄の台座』が出現した。

「……なんだ、この禍々しい鉄塊は」

重厚なボディ。 目盛り(グリッド)が刻まれた盤面。 そして、右側には長く、鋭く、湾曲した『巨大な刃(レバー)』が天を向いて屹立している。

「刃だ。それも、ただの刃ではない」

ガイルは元処刑人の勘で悟った。 この形状。この重量感。そして、獲物をセットして刃を振り下ろすという構造。

「これは……『卓上断頭台(ギロチン)』だ」

「し、しかしガイル様。人間を乗せるには小さすぎます」 部下が恐る恐る指摘する。

「愚か者。これは肉体を裁くものではない」 ガイルは、手元にあった「隣国との不平等条約書(原本)」を手に取った。

「この盤面の目盛りを見ろ。これは『世界の秩序』を表している」
 「そして、この刃は……『事象』を裁くためのものだ」

ガイルは条約書をセットした。 切りたいライン(余白部分)に刃を合わせる。

「見よ。この不平等な条約の『余分な部分』を、物理的に断ち切る!」

ガイルは無造作に、しかし慈悲深く、レバーを一気に振り下ろした。

ザンッ!!

空気を裂く鋭い音。 そして、紙が切断される音ではない、何かが「断絶」されたような重い手応え。

「……切れた」

切り口を見る。 ナイフでは不可能な、神業のごとき一直線の断面。 繊維の一本も乱れず、細胞レベルで切断されている(ように見える)。

「素晴らしい……! なんという切れ味!」 
「これは紙を切ったのではない! この紙に宿る『未練』や『因縁』を断ち切ったのだ!」

「おおお! さすがガイル様!」

噂は瞬く間に城中に広まった。 地下室には、悩みを抱えた貴族や官僚たちが殺到した。

「ガイル殿! この『借用書』を断ち切ってください!」
「借金をチャラにするわけではないぞ?」
「ええ、ですがこの『借金があるという重圧』を断ち切りたいのです!」

ガイルは借用書の余白を、数ミリだけカットした。 ザンッ! 「おお……! 心が軽くなった! これで明日からも借金生活を耐え抜けます!」

次は王妃がやってきた。 「ガイル……。王の浮気相手の名前を書いた紙よ。これを……」 「承知いたしました。その『縁』、断ち切りましょう」

紙をセットする。 ザンッ! 「ああ……! スッキリしましたわ! まるで彼女の首が飛んだかのような爽快感!」(※紙を切っただけです)

いつしか、このペーパーカッターは【因果切断の祭壇】と呼ばれるようになった。 「病気」と書いた紙を切れば病が治り(プラシーボ)、「戦争」と書いた紙を切れば平和が来る(気がする)。

「並べ! 切って欲しい『概念』を持って並ぶのだ!」
「今日は切れ味が良いぞ! スパッと運命を変えてやる!」

ガイルは生き生きとレバーを上下させた。 ザンッ! ザンッ! ザンッ!

そこへ、慌てた新入りが駆け込んできた。 「ガイル様! 大変です! 間違えて『建国記念書』の端を切ってしまいました!」

「なにっ!?」 場が凍りつく。 国の根幹に関わる重要書類だ。

「ま、まずい……! 『建国』の因果を断ち切ってしまった!」
 「このままでは国が消滅する! 歴史が途切れるぞ!」

「繋げ! 早く繋ぐのだ!」 「セロハンテープ班! どこだ!」 
「以前の事故で封印されました!」

「ならば糊だ! いや、間に合わん!」 
「ガイル様! 貴方の指を! 貴方の指を詰めて、その血で契約を結び直すしか!」

「やむを得ん……! 国のためだ!」

ガイルは覚悟を決め、自らの小指をペーパーカッターの台に乗せた。 「この『断頭台』に、等価交換の生贄を捧げる!」

「やめてくださいガイル様ぁぁぁ!」 
「いーややるね! 俺の指一本で国が救えるなら安いものだ!」

地下室では、ペーパーカッターに指を突っ込もうとする元処刑人と、それを必死に止める官僚たちの、血なまぐさい押し問答が繰り広げられた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「……ねぇ」

わたしはモニターの前で、冷めた目で画面を見つめていた。

「なんで指切ろうとしてんの?」

安全ガードついてるじゃん。 指入らないように透明なカバーあるじゃん。 なんでわざわざカバー外して指突っ込もうとしてんの?

「『因果切断』って何……?」 
「ただのサイズ調整だから……。A4に揃えるための道具だから……」

(──もうやだ……。何送っても呪いの道具にされる……)
(──紙を切るだけだよ? なんで「運命」とか切っちゃうの?)

借金の紙を切っても借金はなくならないし。 浮気相手の名前切っても、浮気は止まらないから。 現実見てよ。ねえ。

「意図としては、事務作業を効率化して欲しかっただけなのに……」 
「なんか、カルト宗教の『指詰め儀式』会場になっちゃった?」

もうダメだ。 あいつらに刃物を持たせちゃダメだ。 次はもっと、こう、平和的で、誰も傷つかない、柔らかいものにしよう。 ……でも、どうせまた「人を飲み込む魔獣」とか言われるんでしょ? 知ってる。

「もう、全部ハサミで切ればいいんじゃないかな!?」
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