転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

文字の大きさ
45 / 63
文明進化(?)編

女神「消しゴム(MONO的なよく消えるやつ)送ったわ〜」 →老賢者「【身を削りて万象を無へと誘う自己犠牲の聖石】を賜った……!」

しおりを挟む
「……はぁ。もう刃物は禁止。絶対禁止」

わたしは天界のデスクで、ペーパーカッターのカタログをゴミ箱にダンクシュートしていた。 前回の指詰め騒動、マジで心臓止まるかと思った。 良かれと思って送ったのに、なんであいつら、すぐに自分の体の一部を捧げようとするわけ? リスク管理能力どうなってんの?

「やっぱさ、安全第一よ。Safety First」 「小さくて、柔らかくて、角がなくて……絶対に誰も傷つけない『平和の象徴』みたいな文房具にするべき!」

しかも、修正テープの時に「消す」需要があるのは分かってるし。 もっと手軽に、直感的に、ゴシゴシ消せるアレなら、原始的な彼らにも使いこなせるはず!

そこでこれ!

【プラスチック消しゴム(スリーブ付き・Sサイズ・5個セット)】

日本の技術が詰まった、軽い力でサラサラ消える白い直方体。 カッターの刃もなければ、重いレバーもない。 ただの柔らかいゴムの塊。

「これなら指を切る心配もないし、投げても痛くない!」 「間違ったらゴシゴシして、失敗を恐れずにトライ&エラーしてね!」

(──頼むから、今度こそ普通に使ってよ? 流血沙汰とかマジ勘弁だからね?)

安心安全のホワイトブロック、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


──王立大図書館・古文書修復室──

「……嘆かわしい。若手の筆写係が、また貴重な文献に書き損じをした」

図書館長の老賢者アルバスは、炭インクで汚れた羊皮紙を見て溜息をついた。 修正テープ(以前、代筆屋ロビンが広めたもの)は高価すぎて、ここでは使えない。 ナイフで削れば紙が薄くなる。

「汚れなき記録を残すとは、なんと難しきことか……」

その時、机の上にコロコロと『白い小石』のような物体が転がってきた。

「む? なんだこれは」

真っ白で、弾力があり、青と白の縞模様の服(スリーブ)を着ている。 甘いような、化学的な香りがする。

「……柔らかい。餅か?」

アルバスは指でプニプニと押してみた。 そして、ふと気づく。 この物体の角が、黒く汚れていることに。 いや、汚れているのではない。 「汚れを吸着したがっている」ように見えるのだ。

「試してみるか……」

アルバスは、書き損じた文字(炭で書かれたもの)の上で、その白い塊を擦ってみた。

ゴシゴシ。

「!?」

アルバスは目を見開いた。 文字が薄くなる。 いや、紙の繊維から黒い粉を絡め取り、この白い塊が自らに汚れを移しているのだ。

「消えた……! 紙を傷つけず、汚れだけを吸い取った!」

だが、その直後。 アルバスは机の上に散らばったモノを見て、悲鳴を上げた。

「ああっ!? こ、これは……!!」

机の上には、黒く丸まった「細長いクズ」が無数に散らばっていた。 そして、白い塊の角が、無残にも削げ落ち、丸くなっている。

「身を……! 自らの身を削ったのか!?」

「館長! どうされました!」 弟子たちが駆けつける。

「見ろ……! この聖なる白石は、我々のミス(汚れ)を消すために、自らの肉体を崩壊させ、ちぎり捨てたのだ!」

「なんと……! なんという自己犠牲!」 「文字一つ消すために、これほどの痛みを伴うとは!」

弟子の一人が、涙ながらに消しカスを拾い上げる。 「見てください……。この黒い残骸。これは『罪の死骸』であり、聖石の『尊い犠牲』の証です!」

アルバスは震える手で消しゴムを握りしめた。 まだ使える。まだ四角い。 だが、これを使えば使うほど、この愛らしい白い塊は小さくなり、やがて消滅してしまうのだ。

「……残酷だ。あまりにも残酷な運命(さだめ)だ」 「我々の過ちを正すために、彼(消しゴム)が死なねばならぬ道理がどこにある!」

「館長、もう使いましょうとは言えません……!」 「そうです! 彼をこれ以上すり減らすなんて、人の道に反します!」

しかし、書き損じは無くならない。 アルバスは苦渋の決断を迫られた。

「……使うのではない。『感謝』するのだ」

彼は消しゴムを祭壇の布の上に置いた。 そして、書き損じた紙を持って、その前に跪いた。

「聖石よ。愚かな私のミスを許したまえ。どうか、貴方の身を少しだけ削らせてください」

「ううっ……ごめんなさい……!」 「痛いでしょう……苦しいでしょう……!」

ゴシッ……(一回だけ擦る)。

「あああ! 角が! 角が丸くなっていくぅぅ!」 「もうやめてぇぇ! 見ていられない!」

図書館の奥深くでは、老人たちがボロボロ泣きながら、白いゴムの塊を紙に擦り付け、そのたびに出る消しカスを集めては「聖遺物」として壺に納めるという、異様な儀式が定着した。

そして数ヶ月後。 丸くなり、小さくなり、黒ずんだ消しゴムを前に、アルバスは静かに告げた。

「……もう、休ませてやろう」 「彼は十分に戦った。これ以上削れば、指で持てなくなってしまう」

「はい……。ありがとう、聖石様……」

彼らはまだ使える(半分くらい残っている)消しゴムを、涙ながらに宝石箱に封印し、二度と使わないことを誓った。 結果、図書館の修正作業は再びナイフに戻り、何も解決しなかった。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「……ムッカつくー!!!」

わたしはモニターに向かって、空のペットボトルを投げつけた。

「使えよ!! 最後まで!!」

なんで半分残して封印すんの!? もったいないオバケ出るよ!? あと、消しカスを壺に溜めるな! ただのゴムのゴミだから!

「『自己犠牲』って何よ!」 「消耗品だから! 減ってなんぼのもんだから!」

(──ねぇ、安全なやつ送ったじゃん……)
 (──なんで勝手にドラマ仕立てにして、勝手に悲劇のヒロインにしてんの?)

あのお爺ちゃんたちの涙、マジで意味わかんない。 「痛いでしょう」って、ゴムに痛覚ないから。 優しさの方向性がねじ曲がりすぎてて、もう会話が成立する気がしない。

「あーもう、思い通りにいかなくてイライラする!」 
「わたしの気遣いを返せ! 新品の消しゴム返せーっ!」

「次はカドケシ送ってやるから、角だけ使ってろバカァーッ!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月中旬出棺です!! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...