転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん

文字の大きさ
48 / 63
文明進化(?)編

女神「メジャー(巻き尺)送ったわ〜」 →宮廷建築家「【世界を捕縛し縮小させる銀の蛇】が現れた……!」

しおりを挟む
「……いや、落ち着けわたし。まだ慌てる時間じゃない」

わたしは天界のデスクで、深呼吸を繰り返していた。 前回のタイプライター事件。 あいつらが打ったデタラメな文字列を見て、一つの仮説が浮かんでしまった。

(──もしかして、あいつら「アルファベット」どころか、文字の概念自体が怪しい……?)

いやいや、まさかね。 でも、もしそうだとしたら、今まで送った文房具なんて「猿にスマホ」状態だったってこと? それじゃ文明なんて育つわけないじゃん!

「文字がダメなら、もっとプリミティブ(原始的)な概念で攻めるしかない」 「『長さ』よ! 物理的な大きさなら、言葉が通じなくても世界共通っしょ!」

建築現場とか見てても、適当な木の枝で長さ測ってるし。 あんなんじゃピラミッドも傾くわ(前に崩れたけど)。 正確な「基準」さえあれば、彼らも正しく世界を認識できるはず!

そこでこれ!

【業務用・剛厚コンベックス(5.5メートル・ロック機能付き・黄色)】

大工さんが腰に下げてる、金属製の巻き尺。 シュルッと伸ばして、離せばバチン!と戻るアレ。 目盛りは大きく見やすいメートル法。

「これなら文字が読めなくても『ここからここまで』って直感でわかるし!」 「世界共通の『メートル』を教えて、規格統一の第一歩にしちゃってよ!」

(──頼む! これなら知識ゼロでも使えるはず! わたしの仮説を否定してくれ!)

計測の革命、転送ポチー!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


──王都・大聖堂再建現場──

「……柱の長さが合わん。西側がまた沈んだぞ」

宮廷建築家ガウディスは、図面(手書きの絵)を広げて頭を抱えていた。 彼らの測量技術は「歩幅」や「肘の長さ」頼み。 人によって長さが変わるため、巨大な建物ほど歪んでいくのだ。

「正確な『物差し』さえあれば……」

その時、足場の上に、カランと『黄色い拳大の塊』が転がってきた。

「なんだ? 派手な石か?」

ガウディスはそれを拾い上げた。 ずしりと重い。側面にはクリップ。 そして、端からちょこんと出ている『銀色の金具』。

「……引け、ということか?」

彼は金具をつまみ、恐る恐る引っ張った。

シュルルルッ……。

「! 伸びた!」 「銀色の帯が……中から無限に吐き出されてくる!」

帯には、謎の刻印(数字)と、細かい線(目盛り)が刻まれている。 ガウディスは目を見開いた。

「美しい……。等間隔に刻まれた、完全なる秩序」 「これこそが神の定めた『世界の尺度』か!」

「親方! すごいっす! どこまで伸びるんすかこれ!」 弟子が帯の先を持って走る。 シュルシュルシュル……。

「待て! 離れすぎるな!」 ガウディスが叫ぶが、帯は3メートルを超えて撓(たわ)み始めた。

「おっと、これ以上いくと折れそうだ」 弟子が手を離した、その瞬間。

シュバッ!!!!

ロックを掛けていなかったテープが、猛烈な勢いで巻き戻った。

「うわっ!?」

バチンッ!!(手元に激突する音)

「ぐわぁぁぁぁ!! 痛ってぇぇぇ!!」

ガウディスの指に、金属の爪が直撃した。 あまりの勢いに、帯の端が暴れて腕に切り傷を作る。

「き、凶器だ! この銀の蛇、噛み付いたぞ!」

「親方! 大丈夫ですか!?」 「離せ! こいつ、生きている! 一度伸ばした身体を、縮めようとする力が強すぎる!」

ガウディスは恐怖した。 この道具は、長さを測るものではない。 「伸びたものを、強制的に元のサイズに戻す」ための拘束具だ。

「わかったぞ……。これは『縮小の呪具』だ」 「世界が広がりすぎるのを防ぐため、神が万物を『あるべき距離』に引き戻そうとしているのだ!」

「なんと……! では、この刻印(目盛り)は?」

「見ろ。『100』『200』と数字が増えているが、これは『距離』ではない」 「『ここまでは許すが、それ以上離れればバチンと弾くぞ』という『神の許容範囲』を示しているのだ!」

「ひぃぃ! だから3メートル超えたら噛み付いてきたのか!」

現場は大パニックになった。 彼らはメジャーを「距離を測る道具」ではなく、「離れすぎたものを強制的に引き寄せる鞭」として使い始めた。

「おい! そこの木材、遠すぎるぞ! 『銀の蛇』で捕まえろ!」 「へい!」

シュルルッ……ガシッ(引っ掛ける)。 「戻れぇぇぇ!」(ロック解除)

ジャララララッ! ドゴォォン!

木材が高速で飛んできて、職人に激突する。

「ぐべっ!?」 「よし! 回収完了!」

「次は逃げる新入りを捕まえろ!」 「ひぃぃ! 助けてくれぇぇ!」

シュバッ! バチンッ! 「痛ぁぁぁ! 噛まれたぁぁぁ!」

「素晴らしい! これぞ『絶対帰還』の力!」 「この蛇を使えば、どんな遠くの物も手元に引き寄せられるぞ!」

大聖堂の現場では、職人たちがメジャーを鞭のように振り回し、資材や人間をバチンバチンと引き寄せ合う、危険極まりないSMチックな光景が広がっていた。 もちろん、誰も「1センチメートル」の長さなど気にしていない。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「……ダメだこりゃ」

わたしはモニターの前で、完全に虚無になっていた。

「測れよ」

なんで武器にしてんの? なんで鞭使いになってんの? 目盛り見てよ。数字書いてあるじゃん。

「『神の許容範囲』って何……?」 「ただのセンチメートルだから……。100センチで1メートルだから……」

(──あ、これマジだわ) (──あいつら、『単位』を知らないんだ)

数字は読めても、それが何を表すのかという「共通の概念」がない。 だから、道具を与えても、見た目と動きだけで勝手な解釈をするしかないんだ。

「……そりゃそうよね」 「『1メートル』なんて基準、誰かが教えなきゃ分かるわけないもんね」

わたし、今まで何を期待してたんだろ。 九九もできない子に、関数電卓渡してたようなもんじゃん。 そりゃ宗教も生まれるわ。

「決めた」 「もう道具を送るのはやめる」

「まずは……『学校』を作らせる・・・?」

「基礎から叩き込まないと、文明なんて一生来ないわ!」 「待ってなさい原始人ども! 次はわたしが『教育ママ』になってやるからなーーっ!」

「まずは『あいうえお』から出直してこーーい!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月中旬出棺です!! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...