わたくしは親も兄弟もおりません!自由にさせていただきます!……はぁぁ?今更何をおっしゃいますの?

刹那玻璃

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わたくしは、誰なのでしょう?

あぁ、ある意味今度こそ終わったな……ちぃちゃん目線

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 アルベルトが彩映を連れて行った先には、大きな丸いものがあった。
 彩映は初めて目にするものだろう。

「千夏ちゃんのボールよりも大きい、卵ちゃん? 綺麗ね~?」

 あぁ、可愛い……。
 我が娘、めちゃくちゃ無邪気にお利口に育っている!
 なんて、現実逃避するんじゃない! 俺!
 あれは……あれは!

 俺たちの目の前で、アルベルトが、彩映の手をそっと卵に近づける。

「ちょっと待て!」
「ベル! 何かあったらどうするんだ!」

 俺と月歩姉が声を上げるけれど、チラッとこちらをみたアルベルトはそのまま、彩映の手に自分の手を沿わせ、殻に乗せた。
 ワクワクとした瞳になり、そして卵を撫でながら、

「可愛い! 綺麗、あったかい……」

とつぶやく。
 その瞬間、ピキッという音がして、殻の一部にヒビが入った。

「えっ……い、いろは……割っちゃう?」

 驚き、手を引こうとするが、アルベルトはそのまま手を殻に当てている。

 ピキピキ……

ひび割れが広がり、割れて現れたのは、真っ黒……ではなく、羊水に濡れたピンクがかった小さな幼体。

「彩映。ふきふき」

 アルベルトが硬直している彩映の前で、毛布で、濡れた体を拭く仕草をしている。

「ふきふき?」

 真似をする彩映から顔を背けると、こちらをみて、

「タオルちょうだい。後で、風か水の術」
「今すぐ使え!」
「無理。馴染んでない」
「何が?」

声をかけると、面倒くさそうに、

「だから、ドラゴンの赤ん坊はめちゃくちゃパワーを蓄えてるっていうか、自分で制御不能。親が纏わせてる力が殻状になり、赤ん坊の力暴走して、死にかかったりしないようにするの。で、生まれた時に一気に放出される力、それを吸いとれるのが子守竜。もしくは親。で、今はいないから」
「って、お前、彩映に危険な目に遭わせてるじゃないか!」
「違う。彩映なら、できる。逆にしなきゃいけない。今、彩映の力は尽きかかって、枯渇状態。このままだと命に関わる。僕が強い力を与えられたとしても定期的にすること必要。手っ取り早いのは、卵の力を吸収させること。昔の古文書にあった」
「……もしかして、親竜に手を出したの……」
「しないし、そっちはできない。そんなことをすれば、僕は命がない。それに一緒に母竜を見つけたのは、ヴァーソロミュー様。同族を手にかけたら、その場で死んでる」

硬い表情。
 もしかしたら、アルベルトも不本意で、でも、言われてしまったからにはこなすしかない、ついでに自分がそばにいて、守るつもりだったらしい。

「……僕だってしたくない。危険だもの」
「いーこ、いーこ」

 さっきは怯えていたものの、キュワキュワ鳴く小さい生き物に、毛布とタオルで拭いている。
 しばらくして、アルベルトが風の術を使うとふわふわの純白の毛の生物が、もふもふの間から、まんまるの青い目で、彩映を見つめた。

《ママ……?》

「可愛い~柔らかい、ふかふか~」

と撫でているが、ベッドに体重をかけプルプルと足が震えているのが見えた俺は、体力がもう持たないはずの彩映をベッドに寝かせる。
 隣からメイドの一人が、持ってきた新しい毛布をかけ、

「おやすみ……彩映」

言いながら、ぽんぽんと毛布の上を叩く。
 
「パパ……抱っこがいい……」

 甘えるような声で、両腕が伸ばされる。

「はいはい」

 抱き上げるとぎゅっと首にしがみついてきたので、よしよしと背中を叩く。

「おやすみ……」

 しばらくして穏やかな寝息が漏れた。

「……あぁ……これはどうするかね」

 母親を取られたと思ったのか、もふもふがしがみついている。

「だから、彩映は、病後で身体が弱いんだよ。眠らせてあげて」

《ママ、いろは?》

「君の産んだ実の母親の名前は知らないけど、この俺の腕の中の子は、俺の娘の彩映だよ。長い間起きているのも、立っているのも疲れちゃうから、眠らせてあげて」

 純白のもふもふが、頷いたのか頭部らしきものが動く。

《わかった》

「ところで、ベル……純白の毛玉って、ブルードラゴンの幼体じゃなかったか?」
「うーん、怪我してたドラゴン、血に染まってて……」
「まずは、生まれたことをヴァーソロミュー様に伝えないと……」
「俺が行ってくる!」

 月歩姉がドアの方に行こうとするが、

「月歩姉。王宮、旦那いるよ? 行ける?」

その言葉にピタッと止まり、プルプル震える。

「い、嫌だ……やめる」
「だよね……誰か一人、本館にいる方に伝えて。アルベルトは言葉が壊滅的に足りないから」
「かしこまりました」

メイドの一人が頭を下げて、部屋を出ていく。

 そして、俺の足をよじ登ろうとする毛玉……大きさに比べ軽い……を、掴み、ポイっとアルベルトの顔に投げつけてやったのだった。
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