メモリーズ・メロディーズ

翼 翔太

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九、炎上

炎上3

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 それから二週間後。学校について、ランドセルの中身を机の中に移していると、とみいちゃんがかなでの席にあわててやってきた。
「かなでちゃん、大変っ」
「どうしたの?」
「かなでちゃんの先生が炎上してるって言ったでしょ? あれ、収まったみたい。
 Ramiっていう人もSNSで言ったことを消したんだ。もう残ってなかったよ」
(小田さん、消してくれたんだ。よかった……)
 そのとき、「土居さん」とあやめが手招きをした。階段の踊り場にむかう。
「聞いてっ。らみちゃんが……らみちゃんから電話がきたの。ブレスレットの思い出、体験してくれたって」
「ほんとうっ?」
 あやめはこくんとうなずいた。
「あたしといっしょに遊んだこと、いっぱい笑ったこと、思い出してくれたって。あたしが心配してきてくれたの、うれしかったって」
 あやめは続けて言った。
「今はまだだれかとなかよくするのはこわいけど、あのブレスレット、お守りにしてくれるって! まだ苦しいけど……いつかそんなことをわすれられるような日がくるって、信じてみるって。泣いた日の数より、楽しくて大笑いした日のほうがたくさんあるように過ごして、悲しかった日々を底のほうにうめちゃいたいって。あ、あたしにも……手伝ってって……」
 言葉が最後になるにつれ、あやめはぽろぽろ大つぶのなみだをこぼした。かなでもなみだ目になりながらあやめを抱きしめた。まわりの子たちの視線なんて、気にならなかった。

 それからさらに二週間後、律からかなでの家に電話がかかってきた。いたずらもなくなってきたので、修業を再開するという連絡だった。
 久しぶりの修業にかなでは思わず駆けていた。バイオリンのレッスンの前に楽器部屋に顔を出すとイオだけでなくルゥト、アノー、そして意外にもオッディもかなでがやってきたことをよろこんでくれた。
 バイオリンのレッスンのあと、かなでは思いきって律に尋ねてみた。
「……律さんはだれかを憎んでいるんですか?」
 そう言われた律はびっくりしているようだった。
「前に聞いちゃったんです。律さんが『今のままだと想鳴者としてしてはいけないことをしてしまう』って言ってたのを。想鳴者がしてはいけないこと……うらみや憎しみをこめること、ですよね」
 律はゆっくりまばたきをして答えた。
「そう、ね。今は小田さまほどではないけれど。だからわたしも彼女にはえらそうなことは言えない」
 律は苦笑した。重い空気が流れる。
「どんな風にその感情を消せばいいのか、未だにわからないの。このままじゃこめたい思い出はどんどん薄れていって、思い出せなくなってしまうのに」
「律さん、わたしのできることはありませんか?」
「え?」
 かなでは律から目をそらさなかった。そんな中口を開いたのはイオだった。
「ねえリツ。カナデに『あれ』を見てもらったらいいんじゃないかな?」
「イオ」
「きっとリツにとって悪いことにはならないよ。だってカナデはリツの弟子、想鳴者のたまごなんだから」
かなではなんのことかわからず、律とイオの顔を交互に見た。律はなにか決意したように言った。
「少し時間をもらえる?」
「あ、はい。もちろんです」
 かなでの耳になにかが動き出すような音が聞こえた気がした。
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